ロシアが「ネオン」の輸出を制限すれば
半導体不足に拍車がかかる!

 しかし、一部の主要投資家は、戦争が起きることはないと高をくくっているようだ。その裏返しに、リスク回避の動きによって株価が下落したロシアのエネルギー大手ガスプロムや、大手銀行のズベルバンクなどの株を、「バーゲン・ハント」する(価格が大きく下げたときに買う)投資家がいる。

 ドル建てのウクライナ国債に、投資妙味があると考える投資家もいる。2月に実施した国債入札でウクライナ政府は目標額を調達できなかった。地政学リスクの高まりを背景に、ウクライナ財政がひっ迫する恐れは高い。しかし、関連資産の価格推移を見る限り、ウクライナ問題のリスクは世界の金融資産価格に十分に織り込まれていないと考えられる。

 戦争が起きないと断言することはできない。プーチン大統領は仏マクロン大統領に対して、「ロシアが核保有国である」と警告を発した。それが警告のまま終わればよいが…、戦争が回避されたとしても米欧がロシアに制裁を発動し、ロシアが報復措置を繰り出す展開は十分に考えられる。それは、世界の供給制約を深刻化させるだろう。

 その一つとして、半導体製造に用いられる「希ガス」の一つである、「ネオン」の供給減少が懸念される。ネオンは、半導体製造工程内の、リソグラフィー(基板に光などで回路パターンを転写する工程)で使用される。半導体回路の微細化によって、ネオン消費量が増えている。旧ソ連時代の設備を用いて、ロシアとウクライナでその多くが生産されている。ロシアが報復措置として希ガスの輸出を制限すれば、半導体不足に拍車がかかるだろう。

 また、エネルギー分野では、スイスの資源大手グレンコアが、ロシアの石油企業ルスネフチ株を売却する方針と報じられた。このように、ウクライナ問題は世界経済の不安定性を一段と高める要因である。万が一戦争に突入すれば、世界の金融市場と経済に大きなマイナス影響が及ぶことを、冷静に考えなければならない。