サプライヤーネットワークの状況を可視化する

 環境変化を正しくとらえ、関係する幅広いステークホルダーに頼ってもらえる存在になるために、企業はサプライチェーン領域でどのような取り組みをするべきだろうか。ポイントは大きく5つあるが、ここではそのうちの1つ、「サプライチェーン上のリスクを横断的に分析し、柔軟に対応可能な体制を構築する」ことについて解説を加える。

 サプライチェーンの改革に当たっては、統括機能が意思決定するだけでなく、現場が実行に移せる状態になることも肝要である。平時のみならず有事にも安定的な供給を実現するための備えを有し、顧客企業やサプライヤーと相互確認することにより、顧客やサプライヤーからは過去の取引実績ではなく、将来の継続的パートナーとして信頼を得ることも必要となる。

 ここで重要になってくるのが、生産管理・調整を高速化するための情報の鮮度である。生産管理・調整するために必要な情報は、企業内ではなく、生産活動を協働しているサプライヤー、物流業者などの複数企業が保有しているものが最も鮮度・精度とも高い場合がある。そのため複数企業をまたいだ製・販・在の一元化された情報共有基盤を整備すべきである。これが実現できると、緊急時にも企業間にまたがる情報を素早く把握し、計画の修正などに柔軟な対応が可能となる。

 ある家電企業では、パンデミックや貿易摩擦・デモなどの政情不安により、サプライヤーからの関連部品の納入が滞るなど、サプライチェーンが寸断され、製品の供給に対して大きな影響を受けた。この寸断は一時的な事象ではなく、ここ数年の間に複数回突発的に発生し、グローバルサプライチェーンに影響を及ぼし続け、そのつど調達部門、物流部門や生産部門の担当者がサプライチェーン関連情報を人海戦術で収集し、対策・検討に追われていた。

 そこで、直接的に取引があるサプライヤーに加えて二次請け、三次請けまで含めたサプライヤーネットワークの状況を可視化し、各地で施行されるロックダウンなどの影響を瞬時に把握するとともに、代理店・特約店など流通サイドの在庫も可視性を高めて、供給不足による顧客へのインパクト分析も効率的に行える仕組みを整えていった(図表)。