日本M&Aセンターは、M&Aに「乗っ取り」のイメージがまだ根強かった約30年前に仲介ビジネスを始め、市場を切り開いたパイオニア。社内体制の再構築が求められている日本M&Aセンターは、M&Aに「乗っ取り」のイメージがまだ根強かった約30年前に仲介ビジネスを始め、市場を切り開いたパイオニア。社内体制の再構築が求められている Photo by Yasuo Katatae

M&A仲介最大手の日本M&Aセンターで、過去5年間で83件の売上高不正計上が発覚。中小企業の事業承継を担う存在として、産業界から大きな期待が寄せられていたが、厳しい視線を向けられている。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

過去5年間で83件の不正
株価はほぼ半値に急落

「正直、かなりまずい内容だ」。M&A仲介業最大手で、業界リーダーを自任する日本M&Aセンターホールディングス(HD)が2月14日に公表した、売り上げの不正計上問題に関する調査報告書の内容に、競合の大手M&A仲介会社幹部はこう漏らす。

 日本M&AセンターHDは2021年12月20日、M&A仲介事業を担う子会社、日本M&Aセンターで四半期ごとの売り上げ認識にずれがあると公表。22年3月期第3四半期の決算発表を延期し、外部専門家による調査を行っていた。

 その結果、過去5年間で合計83件の売上高不正計上が発覚。21年3月期と22年3月期の各四半期報告書、21年3月期有価証券報告書の訂正を行った。

 調査結果を公表して以降、日本M&AセンターHDの株価はほぼ半額に急落。同社は再発防止策を発表したものの、株価に反転の兆しは見えていない。冒頭のような業界内からの厳しい評価が、市場からも同様に下されているのだ。

 もっとも、報告書の内容を見れば当然のことだ。

 売上高不正計上の手口として明らかにされた行為は、M&Aという企業同士の機密情報を扱う仲介業者としてあるまじきもので、しかも社内で大規模にまん延していたからだ。