ウクライナ軍による攻撃激化が
ロシア軍侵攻の口実になる恐れ

 そして2月18日、プーチンは動き始めた。

「ウクライナ軍の攻撃が激化して危険だから」との名目で、ウクライナ東部のドネツク、ルガンスクから、住民の避難を始めさせたのだ。

 女性、子ども、高齢者を中心に、これまで6万人以上がロシア領に避難したと報じられている。

「攻撃が激化して危険」というのは事実だ。

 欧州安全保障協力機構(OSCE)によると、1日1000~2000件の銃撃が行われている。

 だが、ウクライナ側は、「ドネツク、ルガンスク側が攻撃をしかけている」と主張している。真相は分からないが、ウクライナ側には攻勢を強める動機はない。

 なぜか?

 ウクライナは、ドネツク、ルガンスクの後ろに、(国境を隔ててはいるが)10万人のロシア軍が控えていることを知っているからだ。

 ウクライナ軍が攻撃を激化させれば、ロシア軍に侵攻の口実を与えてしまう。

 したがって、ドネツク、ルガンスク側が意図的に戦闘を激化させ、「ウクライナ軍が攻撃している」と主張することで、ロシア軍が侵攻しやすい環境を整えたのではないかと、筆者は考えている。

 実際、プーチンは、「ドネツク、ルガンスクでジェノサイドが起きている」と主張し、2月21日に、親ロシア派勢力が支配する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認した。さらに、平和維持部隊を送ることを決めた。