ヒマそうな従業員に「職務質問」する!

 それぞれの業種、現場によって、さまざまな違いはあって当然ですが、ここでは経営者ならだれでも汎用性高く、直感的に使えるボトルネック発見のテクニックをお知らせしましょう。

 それは、「職務質問」です。

 普段と違う動きをしている従業員、ウロウロしている従業員、手持ち無沙汰の従業員を見かけると、私は即座に聞きます。

「おい、今、何しているんだ?」

 これだけ。まさに、警察官の職務質問です。

 私は、当の従業員を叱るつもりはまったくありません。もちろんわざとサボっているなら話は別ですが、より重要なのは、「なぜ変な動きをしているのか?」「なぜヒマや手待ちが生まれてしまっているのか?」を探ること。

 ウロウロしているのは決して従業員のせいではなく、ウロウロせざるを得ない流れを放置している経営者の責任です。

 そして、こんな答えが返ってきます。

「……えっと、今必要な金型が見当たらなくて、あわてて探しに来たんです」
「ちょっと確認したい内容があって、○○さんを捜していたんです」
「こっちは処理が終わったのに、次の仕掛かり品が来ないんで、やることないんです」

 どうでしょう? ボトルネック発見のヒントに満ちていませんか?

 このやり方、ある程度改善が進み、効率よく生産できるようになってからのほうがより使いやすくなります。イレギュラーが少なくなっている分、目立ちやすいからです。そして、時に大きく改善できるきっかけにつながります。

 思い切って棚を増やす、すぐに連絡が付く手段を入れる、優先順位や生産の順序、工程同士の組み合わせを考え直す……こうしたことが、さらに効率を上げ、どんどん稼げる力へとつながっていくからです。

 私は、しまいにはヒマそうな従業員を見つけると、ワクワクさえしていました。そこには改善のヒントがあふれているから。

 だから私は、少しでも時間の余裕があれば、常に「現場パトロール」をしていました。

お金がなくてもすぐできる!
ノンストップ組み合わせ生産

 生産をもっとも効率よくするのは、流れを止めないこと。複数の工程をできるだけノンストップで作り続けることです。

 特定の工程に2倍の時間がかかる品物のケースで、工程の流し方を他の品物と同じ一定のペースにしていると、途中で時間がかかってしまう分、その後の工程の流れは途切れてしまいます。

 現場では案外、そんなものだ、時間がかかるのは仕方ない、などと見逃しています。これこそ、ボトルネックの典型例です。

 そこで、できるだけ待ち時間をなくせるよう、あらかじめ生産計画を調整しておきます。

 難しい話ではありません。ある工程で2倍の時間がかかることが分かっているなら、前日のうちに翌日必要な分の半分を作っておきます。残りを当日作業することで、ライン全体の待ち時間は激減します。

 残業代以外、新しい投資は何も必要ありません。

 できるだけ同じスピードでポンポンと生産し、均一化した流れが保てるように最適、最良のパターンを見抜き、事前に共有しておくことが大切です。

(本原稿は、平美都江著『なぜ、おばちゃん社長は「無間改善」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』から一部抜粋・改変したものです)

平 美都江(たいら・みとえ)
平鍛造株式会社前代表取締役社長。現在は株式会社インプルーブメンツ代表取締役社長。1956年東京都生まれ。1977年日本女子大学理学科を、父の看病のため中退し、父が設立した平鍛造株式会社に入社。工場のオペレーターや営業職を経て、1986年専務取締役就任。宅地建物取引士、CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を次々と取得。父の天才的な技術で製造される超大型鍛造リングにより、他の追随を許さない企業として急成長。その後、リーマン・ショックによる景気悪化などにより受注量が激減。型破りな父による強引な客先交渉が裏目に出て、2009年に廃業する事態に。会社存続の危機に追い込まれる中、代表取締役社長に就任し営業を再開。一度離れた顧客の信頼回復に努めつつ、数々の経営の合理化を進め、数年で業績を回復させる。2018年大手上場会社へ株式を90%譲渡するが、2021年6月まで代表を務める。その後、株式会社インプルーブメンツを設立し、代表取締役に就任。著書に、『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか――父が廃業した会社を引き継ぎ、受注ゼロからの奇跡の大逆転』(ダイヤモンド社)がある。