日本の所得格差をめぐる「意外な事実」、国際比較で判明Photo:PIXTA

格差が世界的に問題になっている。日本においても、岸田政権は「新しい資本主義」によって格差を縮小させるとしている。なぜ格差が拡大しているのか、格差をどのように解決するべきなのかを議論する前に、まず事実を整理したい。それによって、日本が成長していない現実を何とかすべきだということが明らかになるのではなかろうか。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

格差をめぐる意外な事実
アメリカの所得は?

 世界的な格差についてはWorld Inequality Databaseが用いられることが多い。このデータは、上位1%の所得、下位50%などの所得のシェアがどのように変化したかを示している。アメリカについてデータを整理すると図1のようになる(これは本連載『「日本で賃金が上がらない」本当の理由、GAFAがなくても給料は上がる?』で図2として掲載したグラフだが、話の流れで必要なので再掲する)。

 図1に見るように、上位1%の所得シェアは1995年(90年からではなく95年からとしたのは、後述の日本と比較するためである)には14.4%であったが、2019年には18.8%へ、上位10%では40.0%が45.5%へと上昇した。これに対し、下位50%の所得シェアは15.2%から13.3%に低下している。

 ただし、これらはシェアであるから、下位50%の人の所得が低下している訳ではない。