中小運送業者の強みは直接請け負うことで、中間マージンを抜かれずに取引ができる点にある。

 荷主企業にとっては運賃が割安になり、運送業者自身も下請けをするよりも高い運賃を得ることができる。

 配達時間を細かく設定しなかったり、人口密度が比較的高いエリアを中心にしたり、サービス内容をシンプルにすることも割安運賃を可能にする仕組みの一つになっている。

 そんな下請けが元請けになって展開するLCC宅配ビジネスに乗り出しているのが、ラストワンマイル協同組合だ。中小の運送業者約50社で組織して宅配事業を展開している。

 設立は2018年で、大手が運賃値上げや総量規制を行った「宅配クライシス」のタイミング。目下、配送エリアをどんどん拡大している。

 ビジネスモデルは「LCCのようなもの」と志村直純理事長。航空業界のLCC(格安航空会社、ローコストキャリアー)の宅配版というわけだ。

仕事が減ったBtoB業者が
BtoCに流れてきている

 加盟業者には、これまでBtoB(企業間取引)の物流を手掛けてきたところも多い。コロナ禍の影響もあってBtoBの仕事が減る一方で、BtoC(企業と消費者間の取引)の宅配市場が拡大していることを受けて、流れてきているのだ。

 物量が多い荷主からは、大手に頼む運賃より億円単位で下がる提案ができるので驚かれるという。

 代表的な取引先は、家具量販のイケアやスポーツ用品メーカーのアディダスなどだ。

 取引先は増やしても、大口顧客や宅配大手の専属にはならない。どこかに首根っこをつかまれたら、一方的な価格をのまされて利益が出せなくなったり、突然仕事を切られたりしかねない。独立したポジションを貫く。

 下請け経験から学んだ生存術である。