ロシア経済制裁で欧州が浴びる「返り血」、忍び寄るスタグフレーションの影Photo:PIXTA

西側諸国がウクライナ侵攻でロシアに科す経済制裁は、もろ刃の剣。返り血を最も多く浴びるのは欧州諸国だ。インフレが高進し、景気が下降するスタグフレーションの深度を検証する。(第一生命経済研究所主席エコノミスト 田中 理)

ロシアへの経済制裁が
世界経済へ波及する三つの経路

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、世界経済および金融市場の先行きに対する不安が広がっている。

 日米欧各国はロシア向けの経済制裁を相次いで発表し、今後も制裁を強化する可能性を示唆している。制裁はロシア経済を疲弊させ、戦闘終結に向けた国際社会からの圧力を強めることになる一方で、世界経済への打撃も避けられない「もろ刃の剣」だ。

 ロシアが早期の停戦に応じるか、国際社会がどこまで制裁強化に踏み切るかは不透明な部分が多い。影響の大きさは追加制裁やロシアの報復制裁の行方に左右されるが、主な波及経路は三つある。

 一つ目は、ロシアとの貿易取引減少による実体経済面での影響、二つ目は、ロシア向けの銀行与信など金融面での影響、三つ目は、ロシアの資源輸出減少によるエネルギー面での影響である。

 日米欧の主要三極経済への影響をこの三つの経路から比較すると、紛争地帯のウクライナと地理的に近接し、ロシアと経済的な結びつきが強い欧州への打撃がとりわけ大きいことが分かる。

 次ページから、その深度を検証していく