3月7日、自動車部品大手マレリホールディングス(HD)の第1回債権者会議が開催され、マレリHDと銀行団26行は事業再生ADRでの再建や総額1000億円規模のつなぎ融資などについて合意した。しかし、マレリHDの利害関係者は呉越同舟であり、再生計画の作成議論は大荒れしそうだ。特集『日産マレリ劇場、開幕』の#2では、関係者の間でささやかれる代表的な「三つの紛糾パターン」をひもとく。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
「マレリ再建劇場」はこれからが本番
再生計画成立の道のりは波乱含み
3月7日、午前10時半ごろになると、東京都内のとあるビルの大ホールに、かっちりとしたスーツをまとった、いかにも堅そうな人々が“ニコイチ”で次々と入っていった。
彼らの正体は、銀行員だ。事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請した自動車部品大手マレリホールディングス(HD)の第1回債権者会議に参加するため、同社に融資する銀行各行から、行員が2人ずつやって来ていたのだ。
1時間40分ほど続いた会議では、マレリHDとメインバンクであるみずほ銀行をはじめとする銀行団が、金融機関への借入金の返済の一時停止や、総額1000億円規模のつなぎ融資などについて合意した。
しかし、終始「淡々とした雰囲気」(マレリHDに融資する銀行関係者)に包まれて散会できたのは、今回で最後になるかもしれない。初回の債権者会議はマレリHDと金融機関の顔合わせのようなものであり、あくまでも最低限の金融支援について話し合われたにすぎない。
つまり「マレリ再建劇場」はこれからが本番だということ。事業再生計画の成立までの道のりは波乱含みとなりそうだ。
銀行団26行やマレリHDの出資者である米投資会社KKRは、ADRの手続きを進めることに合意しているものの、いわば呉越同舟でマレリHDの再生に向かっている。次ページでは、金融機関の債権放棄や、KKRの責任追及などを巡り、議論が大荒れ必至の理由をひもとく。