日本は少子高齢社会で人口が減少傾向、
高い経済成長は期待できない

 よく、「定年になったらリスクを極力避け、それまでに作った資産は預貯金などの安定資産で運用するのが理想」と言われますが、私が考えるに、これは明らかな間違いです。

 確かに一昔前であれば、そのような理屈も通ったと思います。高度経済成長期の日本経済は、どんどん右肩上がりで上昇したため物価も上昇、それにともなって金利もそれなりに高い水準にありました。郵便局の定期預金では年7%程度の利回りを得ることができた時もあり、資産のすべてを預貯金に放り込んでおいても、しっかりと利息がついて、お金が増えていったのです。

 でも、これからの時代、それと同じことが通用するとは思えません。

 日本はすでに少子高齢社会に突入しており、人口も2005年以降は自然減少へと転じました。人口が減少傾向をたどるということは、高い経済成長も期待できないということになります。

 経済が成長しなければ、国内における資金需要も高まりませんから、金利は低いままになります。つまり、預貯金だけではお金が増えないという状態が続く恐れが高いのです。

 したがって、預貯金に預けっぱなしにしておくのではなく、自分で優良な投資対象を探し、そこに資金を投じる必要があるのです。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。
つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言、国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、
個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う複数のファンドアワードで連続受賞。
口座開設数16万人、預かり資産4700 億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』他多数。