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自己肯定感の低さに悩む人が非常に多くなっているようだ。欧米人の自己肯定感の高さと比べて日本人の自己肯定感の低さが際立っているという国際比較データがあり、「日本人も欧米人を見習ってもっと自己肯定感を高めないといけない」と言われたりするからだろう。しかし、私たち日本人の自己肯定感は本当に低いのだろうか。そこを検討してみる必要がある。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)

国際比較調査は、表面上の自己肯定感しか見ていない

 私は、心理学の研究や国際比較調査で用いられている自己肯定感(自尊感情)の測定項目に対して、常々疑問に思うことがある。これでは本当に自己肯定感を測れていないのではないかと。

 そこで、面接の際に自己肯定感についても尺度項目で測定してみたが、自己肯定感の得点と面接での印象がずれていることがよくあった。そこで、学会シンポジウムや論文において、話していて得られる印象と尺度得点との間に乖離があるのではないかという疑問を提起してきた。

 前回の記事でも書いたように、自己肯定感を測定する尺度で得点が高い人が必ずしも面接において自信を感じさせる人物でなかったり、面接で自信を感じさせる人物が必ずしもこの尺度で得点が高くなるわけではなかったりする点を指摘し、自己肯定感を問題にする際には、謙遜の美を意識させる日本文化の特徴といった文化的要因を考慮する必要性を強調した。