日本を代表する化学メーカー、東レ(日覺昭廣社長)で今年1月末、家電製品や自動車部品に使う樹脂製品の安全認証での不正行為が明らかになった。製品特性の一つである燃えにくさについて、アメリカの第三者安全機関であるUL(アンダーライターズ・ラボラトリーズ)から認証を得る際に、実際の製品とは異なるサンプルを提出するなどして、試験を不正にクリアしていたという。東レは今月にも報告書を公表する運びだが、取材を進めると、実は東レが、5年以上前からこの不正を把握し、公表直前までひそかに“火消し工作”を図っていたことが分かった。また、5年前に子会社であった品質不正を教訓として実施した再発防止策が、まったく機能していなかった疑いも浮上している。(フリーライター 村上力)
認証を得た410品種のうち
110品種で不正が発覚
東レのリリースや新聞報道によると、昨年末に東レが実施した社内アンケート調査への回答で、ULの不正が発覚したという。東レが販売している樹脂製品約1600品種のうち、燃えにくさである難燃性能を示す規格「UL94」の認証を得たのは約410品種。そのうち110の品種で、不正行為が確認されたようだ。東レ全体の売上高に占める樹脂ケミカル事業セグメントの売り上げは16%に相当し、会社全体の信用を揺るがす不祥事だ。
東レは、不正行為があった品種のうち9割超は、難燃性能がULの基準を満たしており、安全性への問題は軽微と説明している。表沙汰になっている経緯だけを見ると、さほど大きな問題ではなく、むしろ社内のチェック機能が有効に機能しているように思えてくる。
だが、事はそう単純ではない。実は、不正のあった樹脂製品を担当する樹脂ケミカル事業部では、2016年6月から、秘密裏に事態を把握していたにもかかわらず、今日まで不正の事実を伏せていたのだ。
そもそも、ULの不正とは具体的にどういうものか。