景気減速を食い止めるために
習政権が講じた多くの対策とは?

 そうした状況下、秋の党大会を経て習国家主席の3期目続投が確実になりつつあるようだ。21年の秋以降、習政権は景気減速を食い止めるために多くの対策を講じた。

 不動産市況に対しては、住宅融資規制の一部緩和が実施された。21年12月と22年1月には、中小企業の事業環境悪化を和らげるために、中国人民銀行が利下げを実施した。地方政府の債券発行や減税、インフラ投資などの財政支出も拡大されている。大気汚染や温暖化対策のために削減されてきた石炭の生産能力も引き上げられる。

 それらによって、習氏は経済成長を実現し、求心力を維持・強化しようとしている。習政権は経済の下振れリスクに危機感を強めているとみられ、一連の経済対策は強化されるだろう。

 加えて、習政権は貧富の格差を解消しなければならない。その姿勢を示すために、共産党政権はIT先端企業への締め付けを一段と強めている。

 具体的にはデータ保護規制の強化やIPOなど資金調達の制限、手数料の引き下げ指導などが実施されている。3月には、IT大手テンセント傘下のウィーチャットペイが、中国人民銀行の一部規則に違反したため巨額の罰金を科されると報じられ、株価が急落した。

 中長期目線で考えると、民間IT先端企業への締め付け強化は、中国経済の高成長を支えたアニマルスピリットをそぐ。一人っ子政策による人口の減少、農村戸籍と都市戸籍の違いによる社会保障の格差問題などもあり、人々は将来への予備的動機を強める。中国の内需はさらに減少するだろう。

 その一方で、ウクライナ危機とコロナ感染の再拡大によって、中国では卸売物価が上昇基調で推移する可能性が高い。当面、中国経済の実力は一段と低下する恐れが高まっている。3期目を目指す習政権は、これまで以上に難しい社会、経済運営を迫られるだろう。