違いを明確にするということは
敵対するしかなくなる

 怖いからね。言論の自由もない。ソ連解体後も、ウクライナは常にロシアからの圧迫があった。当然、ウクライナの人々はロシアが嫌いになっていくだろう。日本だって中国と同盟を組むよりも、アメリカと組みたいと思った。

――ソ連がなくなり、西側諸国と接しているうちに、ウクライナの意識も変化していったということですね。

 大国が近くにある国にとって、中立というのは危険な状況だからね。日本は中国と近い位置にあり、本当は中立すべきだけど、中国は危険とわかっているので日米同盟を組んでいる。アメリカと同盟を組むことで、他国は日本を安易に攻めることができず、日本は安全が保障される。

――ロシアはウクライナを「元ソ連同士の兄弟」と思っていたが、ウクライナはそのような意識は持っていなかった。こうした意識のズレも近年、大きくなっていたように感じます。

 ロシア側は、同じ旧ソ連国で文化も宗教も共有しているのに、なぜ離れていくのか、なぜ裏切るのかと思っている。

 一方、ウクライナ側は、プーチン率いる今のロシアは多民族が集まった国家で、自分たちこそが純粋なロシアであり、本家なんだというプライドもある。しかしこうした考えも間違えだ。違いを明確にするということは、敵対するしかなくなる。

――ロシアとウクライナ、妥協点はあるのでしょうか。

 プーチン氏は当初、ウクライナを親ロ政権に変えたいという思いから軍事侵攻を始めた。しかし誤算続きで思うように進まない。

 僕は今回の軍事侵攻が成功するとは思えない。

 西側諸国は経済制裁を強化しており、すぐに効力は出ないかもしれないが、じわりじわりと効いてくる。アメリカ側の情報筋では、このまま経済制裁が進むと、ロシアはデフォルト(国債や対外債務の不履行)に陥り、5月までには経済が立ち行かなくなるといわれている。

――ロシアは1998年にもデフォルトに陥りましたが、今回は財政環境が良好な状況であったにもかかわらず、以前とまったく異なる形でのデフォルトに向かっているのですね。

 デフォルトに陥った場合、ロシアは一体どうなるのか、まったく予想できない。このままではロシアの経済が立ち行かなくなることはプーチン氏も当然、わかっているから、焦りに焦っている。世界中の批判を浴びながらも原子力発電所や民間病院へ攻撃したことも、そうした焦りの表れだろう。どんな手を使ってもキエフや主要都市を早く陥落させたい。

――原発を占拠することで、ウクライナの電力を抑えて国力を落としたり、恐怖心を植えつけたりという目的があるかと思います。それだけではなく、周辺国へ難民を出し、人が住めなくなってもいいのでとにかくウクライナを占拠したい、このようにロシア側が考え、最悪、原発を爆破する可能性は考えられますか?