戦闘に勝って戦争に負ける可能性
停戦協議におけるロシア側の態度が軟化

 アメリカなどは誤解しているが、さすがにそれはしないだろう。ロシア側へも多大な影響を及ぼす。プーチン氏はとにかく親ロ政権を打ち立てたい。これがすべてと思う。

――ゼレンスキー氏は亡命せず、ウクライナ国民も徹底抗戦の構えです。政権が倒れて親ロ政権が生まれることは難しく、ロシアは「戦闘に勝って戦争に負ける」ともいわれています。

 音を上げるのはロシアのほうが早いかもしれない。

 停戦協議も、ロシア側の態度が軟化してきたといわれているね。当初、ロシア側は圧倒的な軍事力を見せつけて有利なまま停戦協議を進めようとし、ウクライナ側の意見には耳を傾けることがなかった。しかし、ロシア側のもくろみが大きく外れて状況が変わってきたということだ。

――ロシア人男性の平均寿命は、1990年代の57歳からは上がっていますが、今も60代と短く、69歳のプーチン氏は、年齢的にも「歴史に名を残したい」「後顧の憂いを断っておきたい」と焦っているのではという意見もあります。

 それよりも、プーチン氏は逮捕・投獄されることを恐れている。ロシアのような全体主義の国というのは怖いところで、戦略の重大な失敗は逮捕されてしまう。大統領といえども身の危険が迫っているので、展望がなくても進撃するしかない。とにかく追い込まれているのだ。

――日本政府はどのような対応を取るべきでしょうか。

 このままロシアへの経済制裁には全面的に協力する。ただし、軍事制裁には一切、関わらない。当然、自衛隊が動くなんてこともない。

――中国の動きに世界中が注目していますが、中国はロシアと距離を置こうとしているのでしょうか。

 習近平氏は、世界の中でどうすれば中国という大国が持続可能になるかを第一に考えている。僕は習近平氏はまともな神経を持っていると思っているが、まともな神経を持っていればこの状況でロシアには手を貸さないだろう。

 僕はやはり中国よりもアメリカがカギを握っていると思う。ただ、アメリカの国内も揺れている。トランプ前大統領は、「バイデン大統領がだらしない形でアフガニスタン撤退を行ったため、ロシアにつけ込まれた、バイデン氏の国際戦略は大失敗だ」と猛烈に批判している。バイデン氏の支持率は4割を切っており、危険な水準だ。

 中国の台湾侵攻への懸念もあり、国際情勢は予断を許さない状況に入った。日本も渦中にいることを、しっかりと意識しなければいけない。