そこで3月11日、スシロー運営会社の親会社であるフード社に問い合わせたところ、同社の広報担当から同15日に電話で「取引先を含めて確認を進めている。マグロが漁獲枠内かどうかの確認には時間がかかっているが、重要な問題なので当社のホームページで公表した」との連絡を受けた。

 スシローは2月下旬から3月上旬にかけて全店舗(634店)で「絶対王者スシローの鮪」フェアを開催し、その一環として大間のマグロを初めて全国販売した。静岡市場で取引されたマグロも冷凍保存して、今回のフェアに使われたようだ。

 大間のヤミ漁獲問題は11月頃からメディアでも報道されており、フード社のマグロ担当バイヤーも当然、漁獲未報告のリスクを感じたはずだ。にもかかわらず、静岡市場出荷から半年経過する3月になってもなお漁獲報告を完了したかどうか確認していなかったとは驚きである。

 太平洋クロマグロは国際的な資源管理対象で、日本でも漁獲量の上限が決められている。大間のマグロも太平洋クロマグロであり、獲った人は青森県を通じて漁獲量を国に報告しなければならない。報告をごまかせば罰金か懲役刑に処せられる。

 漁獲報告をごまかしていれば違法マグロである。調査の結果は別として、フード社の法令順守姿勢は中途半端なものだったと言わざるを得ない。

 フード社は、「お知らせ」の中で、同社が扱う食材の素性(産地)については取引先からの報告・証明書を持って確認しているとし、フェアで扱ったマグロは大間産であることを確認済みだと説明している。

FOOD & LIFE COMPANIESが公表した「お知らせ」FOOD & LIFE COMPANIESが公表した「お知らせ」 拡大画像表示

 しかし、漁獲あってこその表示であって、優先順位を間違えてはいけない。産地の表示が正しくても不正漁獲物であれば、証明書をもらっても何の役にも立たないはずだ。

民間業者の産地証明書の信用は
「大間まぐろ」ラベルに劣る

 そもそも、大間では2007年に大間漁業協同組合を権利者として登録した地域団体商標「大間まぐろ」のラベルが定着している。「青森県下北半島大間沖で漁獲されるまぐろ」が商品の定義であり、組合員なら誰でも利用することができる。

 漁業者が大間漁協の岸壁で水揚げしたマグロであれば、直ちに漁協が計量して水揚げの記録を作成し、漁協は漁業者から委任された立場で漁業者ごとの漁獲実績を青森県庁に報告する。そうしたマグロには大間産の証明である「大間まぐろ」の商標ラベルを貼って出荷する。