いま、注目を集める研究会がある。わずか2年で約1000人規模へ拡大し、東大新入生の20人に1人が所属する超人気研究会に成長した、「東大金融研究会」だ。創設者は外資系ヘッジファンドに20年在籍し、超一流の投資家として活躍してきた伊藤潤一氏。東大金融研究会ではお金の不安から自由になり、真の安定を得るために「自分の頭で考える」ことを重視している。世の中に溢れる情報や他人の声に振り回されず何が正しいのかを自分で判断し、物事を本質的に理解し、論理的に思考を展開することで、自立した幸せな人生を歩むことができるからだ。本連載では、東大金融研究会の教えを1冊に凝縮した初の書籍『東大金融研究会のお金超講義』から抜粋。頭のいい人だけが知っている「お金の教養と人生戦略」を紹介する。

「この業界は儲からない」非効率市場のチャンスをつかむ方法【東大生が投資のプロに学ぶお金の教養】Photo: Adobe Stock

異分野をまたいで非効率な市場を見つける

私は金融業界で仕事をしてきましたが、いまはさまざまな異分野の人と組むことを意識的に行っています。それは、異分野をまたいで活動すること自体が強みを生むと考えているからです。

たとえば「金融業界」と「スポーツ業界」を例に考えてみましょう。

これはどの分野にも言えることですが、「外から見れば非常識だけれど、内部では当たり前のものとして受け入れられている常識」があるものです。

金融業界でいえば、テレビドラマ『半沢直樹』を見て「まさかあんなことは実際にはないだろう」「ドラマだからこういう演出になっているんだな」と思う方が多いと思います。しかし新卒で銀行に入って働いていた私から見れば、あのドラマで描かれていることは「普通にある」のです。

スポーツ業界はいまだに前近代的な面が多々見られます。

2018年、日本ボクシング連盟の問題が注目を集めたとき、当時の会長だった山根明さんの風貌や言動を見て「いつの時代の人だろう」と思った方は少なくなかったでしょう。しかしあの「ザ・昭和」とでもいうべき雰囲気は、少なくとも当時のボクシング界では「普通」だったはずです。

このように、各業界にはそれぞれ独自のルールや文化というものがあり、内部にいる限りはルールや文化に合わせて効率的に物事が決まっていくものです。

しかしひとたび金融業界とスポーツ業界の「共通集合」部分に足を踏み入れると、そこには非効率な世界が広がっています。

わかりやすく言えば、金融の世界の人は「スポーツの世界はそんなに儲からないから」という理由でスポーツに大きな投資をしようとせず、スポーツの世界の人は「お金の話なんて汚い」という理由で真剣に儲けることを考えなかったりするのです。

この点、アングロサクソンの人々というのは「非効率な市場には儲けるチャンスが偏在している」ということをよく知っています。それが、アメリカでは野球やフットボールが、欧州ではサッカーが、それぞれに金融の力を借りて巨大なビジネスに成長した理由でしょう。

ところが日本では「非効率な市場」に目を向ける人が少ないのが現状です。

金融は人間の身体にたとえれば「血流」であり、あらゆるジャンルに張り巡らされるべきものですが、スポーツ業界の例に限らず金融業界はなかなか「非効率な市場」に手を出そうとしません。本来は大きく儲けるチャンスにもかかわらず、積極的に取りに行くプレイヤーが見当たらないのです。

そこで私は、「自分から積極的にさまざまな業界の人たちと仲良くなって、共同作業で非効率性を取りに行けばいい」と考え、実際に取り組むようになったのです。

(本原稿は、伊藤潤一著『東大金融研究会のお金超講義 超一流の投資のプロが東大生に教えている「お金の教養と人生戦略」』から一部抜粋・改変したものです)