政府の郵政民営化委員会は12月18日、ゆうちょ銀行が認可申請している住宅ローンなどの新規業務について、条件付きながらゴーサインを出す意見書をまとめた。一方で、認可権限を持つ金融庁は、審査に対するゆうちょ銀の姿勢を問題視。「現状で認可は考えていない」とのコメントを出す異例の事態に発展した。

ゆうちょ銀の2013年4月の融資業務参入は厳しい状況になった
Photo:EPA=JIJI、PANA

 12月18日午後5時すぎ。金融庁が配布したA4判1枚のコメント文を見て、ゆうちょ銀行の行員たちの間で動揺が広がった。

 1枚紙には、ゆうちょ銀が認可申請している住宅ローンなどの融資業務について、

「議論すべき項目は非常に多く、当庁の審査はまだ、ほとんど進んでいない」

「審査の進捗状況から見て、およそ認可の可否について判断する段階にはない」

「現状では、民営化法上の認可や銀行法上の承認は考えていない」と、監督当局としては異例とも言える強い表現で、認可に否定的とも受け取れるコメントが列記されていたからだ。

 政府の郵政民営化委員会(西室泰三委員長)が、ゆうちょ銀の融資業務参入に「実施することが適当である」との意見書をまとめたのが同日の午後2時。それから、わずか3時間後のコメント発表だったこともあり、当局の怒りが「手に取るように伝わってきた」(ゆうちょ銀幹部)という。

 怒りに火を付けた原因は何か。それは認可に必要な情報の開示に対する、ゆうちょ銀の消極姿勢だ。

 ゆうちょ銀が、住宅ローンや法人向け融資の認可申請をしたのが2012年9月。それを受けて、金融庁は民営化委の審議と歩調を合わせるため、審査に向けて体制整備の状況や、リスク管理の手法などについて質問を重ねてきた。

 その一方で、ゆうちょ銀が毎回提示してくるのは、教科書に書いてあるような融資金利を算出するときの概念図や、事務手続きの大まかな流れといった書類ばかり。