ビジネス全体を見渡せる
マネジメント能力が重要に

 こうした事例からわかることは、今後はグローバル競争で勝ち残るために、ビジネス全体を見渡せるマネジメント能力が重要になるということだ。電機業界には古くから「経営は文系、技術は理系」という壁があったが、「今後はマネジメントと技術の両方に長けた人材が求められる」と長内教授は見る。

 すでに各社は構造改革を進めている。従来は重電機器から家電まで幅広い分野をカバーしていたが、競争に陥りやすいBtoC事業から産業用機器、プラント、交通機器など堅調な動きが続く社会インフラ関連事業へと軸足を移している。日立製作所など比較的業績のよい企業は、もともとこれらの分野に強みがあった。

 電子部品にも追い風が吹いている。5G(第5世代通信網)対応スマートフォンの生産拡大、コロナ禍の在宅勤務に伴うパソコン、データセンターの需要増により、半導体の引き合いが堅調だ。  

「風」を敏感に読み、収益性の高い新たなビジネスへとつなげていくのが、これから求められるマネジメントの視点といえる。

電機の業界研究、起死回生の「追い風」を味方につける企業とは【再編マップ付き】

 長内教授はこうも指摘する。

「電機業界に勤めるなら、業績がよくなくても構造改革を進めているなど、これから伸びる可能性のある企業にいくほうが、仕事の醍醐味を味わえるのではないか」

 たとえばシャープは鴻海傘下に入ったあとも、日本の現場のやり方が維持され、実力主義の徹底が社員のモチベーションアップに寄与している。ここにきてソニーの劇的な復活も話題になっている。環境が変わっても、日本のモノづくりは形を変えて生き残っていく希望を抱かせる。業界を覆う「厚い雲」を自分が吹き飛ばすつもりで電機業界に飛び込むのは、価値のある選択といえるだろう。

 一方、安定志向が強い人は、目立たなくても特定の分野で世界的シェアを有するような、専業電機メーカーに目を向けるのもいい。BtoBビジネスで競争力のある製品を扱う企業は、経営基盤が安定しており、驚くほど給料や待遇がよい。