「ロシア帝国」がコンプレックスを抱く理由、旧東側諸国のデータで検証Photo:PIXTA

ロシアのウクライナへの非道な攻撃が続いている。ロシアによれば、ウクライナはロシアと一体であり、西側に走るのはけしからんというのだ。なぜウクライナが西を向くのか。旧ソ連圏のデータからその理由を考えてみたい。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

ソ連崩壊後、「西を向いた国」が
豊かになった?

 1991年12月25日にソ連が崩壊して、それ以前ロシアの一部だった国が独立し、実質的にソ連の属国だった国が独立を果たした。その後どうなっただろうか。

 図1、次ページ図2は、IMFのデータに基づき(チェコはIMFのデータがないのでOECDのデータによる)、ロシア、アルバニア、ベラルーシ、ボスニア、ブルガリア、コソボ、モルドバ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア、ウクライナ、ジョージア、クロアチア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、エストニア、ラトビア、リトアニア、スロバキア、スロベニア、チェコ、フランスの1人当たり実質購買力平価GDP(2017年米ドル)の推移を見たものである(1人当たり実質購買力平価GDPは、大きく変動する為替レートでの換算と異なって生活水準を適切に示す指標とされる)。

 これだけの数の国が自由を取り戻したということは、ロシアがそれだけの数の従属国を失ったということである。さらに中央アジアの従属国も失った。ロシアの喪失感は理解できるが、それまでが間違っていたと思うしかない。

 国が多くてグラフが分からなくなるので、2021年時点で3万ドル(2017年米ドル)未満の国を図1に、3万ドル以上の国を図2で示している。他の先進国の経済状況を見るために、参照国としてフランスを加えている。フランスを選んだのは、ヨーロッパ大陸の大国、ドイツ、フランス、イタリアのうち、豊かさで中位にある国だからだ。

 次ページでは、旧ソ連圏諸国で経済成長に差が出た理由を詳しくみていく。