スポーツ指導における
パワハラの定義と相談先
スポーツ界における暴力・ハラスメントについては、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が相談窓口を設けている。下記の言動が、同センターが受け付ける相談の基準だ。
(1) 身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼす行為
(2) (1)に準じる心身に有害な影響を及ぼす言動
(3)その他競技者の能力・適性にふさわしくないスポーツ指導
(引用元:トップアスリートのための暴力・ハラスメント相談窓口)
たとえば殴る・蹴るのほか、突き飛ばす、髪を引っ張る、壁に押さえつけることは暴力行為に当たる。パワハラに関しては、指導中の心ない言葉や人格否定、無視などが該当する行為だ。暑い日の長時間のランニングや、水分補給をさせずに運動させる指導も、相談対象とされている。
上記に当てはまる指導を受けた場合、直近4年以内であれば相談可能だ。ただし、対象となるのはトップアスリートとその関係者に限られる。一般のスポーツ指導におけるパワハラに関しては、各種団体が設置する窓口に相談可能だ。
しかし相談窓口を利用するのは、もっぱらパワハラ被害者側だろう。ビジネスシーンでのパワハラと同様に、指導者は自分がパワハラをしていることに無自覚な場合が少なくない。被害者が声を上げないと、なかなかパワハラの改善が進まないのが現状である。
パワハラ的な指導を防ぐには、指導者の意識改革が必要だろう。そのために取り入れてほしいのが「セルフ・コンパッション」である。
セルフ・コンパッションとは、直訳すると「自分への思いやり」や「自分への慈しみ」という意味だ。心理学では、セルフ・コンパッションによって失敗や挫折からの立ち直りがスムーズになると考えられている。似たような語感を持つ「セルフ・エスティーム」は、「自尊心」や「自己肯定」を指す言葉であり、セルフ・コンパッションとは異なることを理解しておいてほしい。