三菱商事と日本電信電話(NTT)という日本最強の商社と通信グループがタッグを組み、DXコンサル業界に侵攻した。両社が設立した会社では、ある分野で日本最高峰の人材をかき集めている。巨大資本とネットワーク力を駆使し、アクセンチュアやデロイトといった強豪がひしめく業界で果たして勝算はあるのか。およそ10回にわたり公開予定の特集『勝ち組に死角!コンサル大乱戦』の#2では、巨大な新参者の戦略を解明する。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
アクセンチュアに食われる!?
DXコンサル業界の競争構図に異変
「制空権を巡る戦いが激化している。上空でポジションを取られたら勝ち目がない」
企業のシステム開発や運用などを請け負うシステムインテグレーター(SIer)の幹部がそう話すのは、熾烈な戦闘が繰り広げられるウクライナ情勢についてではない。DX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティング業界で今起きている競争の構図についてだ。一体どういう意味か。
業界には、戦略立案、データ分析、システム開発・導入、保守・運用といった、上流から下流に至るバリューチェーンが存在する。例えば米ボストン コンサルティング グループや米マッキンゼー・アンド・カンパニーといった外資系コンサルティングファームは最上流の戦略立案、NECや富士通などのSIerはシステム開発・導入といった中流域をそれぞれ得意とし、顧客のDX支援において明確なすみ分けがあった。
だがデジタル化が加速する現代において、従来のすみ分け型では顧客のニーズに対応し切れなくなっている。代わって主流となっているのが、上流から下流に至る全ての業務を一気通貫で請け負うビジネスモデルだ。これまで中流のシステム開発にあったDXの起点が、最上流の戦略立案に移行しつつあるのだ。
つまりSIerからすれば、これまでの主戦場だった中流域のシステム開発ではなく、彼らの“上空”のコンサル業界で熾烈な案件獲得競争が起きているのだ。中流の“陸上”で待っているだけでは仕事にありつけない、というわけだ。
その情勢下で巨大化しているのがアクセンチュアだ。一気通貫型のDX支援を得意とし、パッケージ化されたソリューションを大量生産・販売する。3月、富士通が3000人規模のリストラを公表したのは、「上流から下流へ利益の源泉を移したアクセンチュアに案件を奪われた影響だ」(冒頭のSIer幹部)とみられている。
一方、SIerのみならず、顧客である事業会社側にも危機感が募る。「DXをコンサルに丸投げし、デジタル化のノウハウが蓄積されない」(同)からだ。
そんな中、日本を代表する商社と通信グループが対応に動き始めた。三菱商事と日本電信電話(NTT)である。実は両社が共同で設立した会社では、ある分野で日本最高峰の人材をかき集め、最新鋭の秘密兵器ともいえる機能を実装しようとしている。その重厚な武器は業界関係者から「宇宙戦艦ヤマト」と称される。
「DXの社会実装をリードしていく」――。そんな金看板を掲げてタッグを組んだ、彼らの狙いとは一体何か。アクセンチュアなどに対抗していくことはできるのだろうか。