エピクロス派の哲学と唯物論

 一方でエピクロス派の哲学は唯物論ですから、定められた運命に従うことにはどちらかといえば否定的です。

 第一、死んだら何も残らないのですから。

 この世の苦しさはどこからくるのか。

 あの世からくるはずはないだろう、生きている現実の中にあるのだと考えます。

 それなのになぜ一所懸命働かなければならないのだ、どうしてもそういう発想になりがちです。

 いっそのこと「隠れて生きよ」、となります。

 エピクロス派の哲学はローマの庶民的な人々の支持を集めたのでしょう。

 ここで唯物論について『広辞苑』の記述を中心に、骨子のみ説明しておきます。

 唯物論とは、世界の諸現象は物質的なものによって、一元的に説明されるべきだとする立場です。すなわち精神に対する物質の根源性を主張するのです。

 物質から離れた霊魂・精神・意識の存在を認めません。

 現代の脳科学に基礎を置く唯物論では、意識とは高度に組織された物質(脳髄)の所産と考え、認識は客観的実在である脳髄による反映であると考えます。

 『哲学と宗教全史』では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を、出没年付きカラー人物相関図・系図で紹介しました。

 僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。

(本原稿は、13万部突破のロングセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)