最近なにかと旗色が悪い糖質だが、先月、大腸がんの再発と糖質との関連を示すデータが報告された。米国国立がん研究所ジャーナルの掲載論文から。
調査研究にはステージ3の大腸がん患者、およそ1万人が参加。それぞれの食事内容を、どれだけ血糖値を上げやすいかの指標である「グリセミック・インデックス(GI値)」と実際の食事の量から計算される「血糖負荷(グリセミック・ロード:GL)」から5グループに分け、術後化学療法中の半年間、追跡した。
その結果、GLや総炭水化物摂取量が最も高いグループでは、最も低いグループに比較し、再発リスクや死亡リスクが80%も高いことが確認されたのである。この傾向は、術前にBMI25以上の肥満者や現在も肥満の患者でさらに顕著であった。
糖質、炭水化物の過剰摂取は食後高血糖を招き、インスリン産生量を増やす。糖尿病の発症リスクであることは言うまでもないが、高インスリン血症とがん発症率、死亡率の上昇との関連も指摘されてきた。少し古い研究だが、2006年の厚生労働省「多目的コホート研究」では、40~69歳の男女約4万人から検診等で採血した血液を提供してもらい、11年半追跡した。その結果、インスリン分泌量を反映する血液中の「Cペプチド」が高い男性は大腸がんの発症リスクが最大3.2倍、結腸がんでは3.5倍に上昇することが示されたのである。
肉や精製された穀物を摂る西洋型の食事が大腸がんの発症、再発リスクであるとは以前から指摘されていたが、そのうちの「何」がリスクを高めるかは不明だった。現在も主犯格をめぐり「赤身肉だ」「糖質だ」との論争が続いている。しかし今回の研究で少なくとも術後の再発予防には、炭水化物の摂取制限が必要であることが明確になった。研究者は「大腸がん手術後の生存率を改善する手段を提供できた」としている。
大腸がんは早期なら比較的サバイバルしやすい一方で、再発後の治療は高額で厳しい。毎日の食事でリスクが回避できるなら、それに越したことはない。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)