気になる政策目線の高さ

 新年を迎えた。オールスター内閣の安倍新政権は、滑り出し上々に見える。発足の前から、為替は円安になり株式市場は1万円を超え、出来高も大幅に増加した。市場は、公共事業の復活と一層の金融緩和という「アベノミクス」をはやし、大いに評価している。

 国民も安倍政権に対して、最初はおっかなびっくりだったが、ここまで市場の反応がいいと、ひょっとしたら失われた20年と呼ばれる長い閉塞感をぶち破る破壊力があるのでは、と新年早々期待も出始めている。

 まるでいいことづくめの新政権の発足だが、気になることがある。それは「政策の目線の高さ」である。

日銀への圧力

 まずは、日本銀行への対処の仕方である。ここまでデフレ経済が長続きしている(日銀の政策が効を奏していない)ことや、日銀が市場との対話が十分できていないこと(第18回参照)から考えれば、日銀に一層の金融緩和とその責任を求めることは、当然であろう。その意味で、デフレ脱却の手段として、2%程度のインフレターゲットの導入を促すことは必要な政策といえよう。

 しかし、日銀に圧力をかける方法は、もう少し丁寧にする必要があるのではないか。次回の金融政策決定会合で、日銀がインフレターゲットを導入しなければ日銀法を改正する、と総理が公言することは、あまりに日銀の独立性を踏みにじってはいないだろうか。

 金融、あるいは金融政策の世界で、もっとも気をつけるべきことは、わが国だけでなく世界の投資家を相手にしているという認識を持つことだ。なぜなら、国債の売買や為替取引は、基本的にグローバルな取引として行われているからである。