全国2700社が導入し、話題沸騰のマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏の最新刊『数値化の鬼』。「仕事ができる人」に共通することは、「数字で考えること」や「数値化のクセをつけること」だと言う。数字によって自分の不足を客観的に受け入れ、次の行動設定や行動変容につなげることによって、人は「急成長」する。「数字で人を見るな」「数字がすべてではない」ということはよく言われるが、「数字」は決して無視できない存在。この本では、「感情を横に置いて、いったん数字で考える」「一瞬だけ心を鬼にして数値化する」など、頭を切り替える思考法を紹介する。

「すぐやる人、先延ばしする人…」凡人が高学歴の人に勝てる、決定的な理由Photo: Adobe Stock

「行動量」だけを考えよう

 人は「量」より「質」を求める生き物です。

 行動する前から「失敗したくない」という思いが強くあることでしょう。

 特に、高学歴だったり、前職での成功体験がある人ほど、プライドが高くなり、失敗を恐れるようになります。

 優秀であればあるほど、計画に時間をかけすぎて行動量が落ちてしまいます

 そこから脱するためには、まず「行動量」にフォーカスすることです。

 日々の業務の中でやらなければいけないことを「何回やったのか」「1日に何時間できたのか」と、行動量を増やすことだけを考えてください。

 時間というフレームで考えるのは、残業してダラダラ長時間やるのでは意味がないからです。

「先延ばしする人」の3つの特徴

 それでも行動まで時間がかかるのは、3つの理由が考えられます。

 1つ目は、「何をすればいいかが明確じゃないから」です。

 これは、「P(計画)」の数値化が甘いことが原因です。計画や目標の中に数字がないから次に移れないのです。

 2つ目は、「失敗したくないから」です。

 これは、「D(行動)」のあとのフォローが重要になってきます。失敗することで、大きな罰を受けるのであれば、おのずと行動は減ります。しかし、実際はそんなことはないはずです。

 3つ目は、「上司やリーダーの言うことが納得できないから」です。上の人の指示に疑問を持っている状態ですね。

 もちろん、わからないことは聞いて解決することが一番です。

 ただし、2つ目の理由ともつながってくるのですが、根本的な「理解」や「腹落ち」は遅れてやってくるものです。

 実際にやってみて、「そういうことだったのか」と気づくのが正しい順番です。

 その場合は、まずは「言われたとおりにやってみる」ことです。

 やってみて、失敗やエラーが起こることは必要なのです。それに対する責任や罰則なんて、プレーヤーレベルの仕事では存在しません。

 大いにチャレンジして、大いに失敗すればいいのです。

「数をこなす」こそ基本中の基本

 著名なヒットメーカーや有名デザイナーも、話を聞いてみると、驚くほどの量をこなしていることがわかります。

 そのうちのいくつかが圧倒的に成功すると、あたかも「それしかやっていない」ように見えます。行動量は「見えない努力」だからです。

 しかし、有名な作品を世に出している人ほど、圧倒的に多くの失敗作も生み出しています

「あの人はうまくいってばかりだな」と、見かけにダマされないことです。

 例え話ですが、ホームランを打ちたければ、誰よりも多くバットを振る回数を増やすしかありません。

 仕事とスポーツは違うように思うかもしれませんが、構造は同じです

 さらに仕事では、スポーツのように「練習」がありません。なので、より普段の行動量が大事になってくるのです。

 ホームランを打てば、その日の三振のことは観客の誰もが忘れてしまうように、大きな成功を生み出すと、それまでの失敗は誰も覚えていないものです。

 だから、まずは誰よりも数をこなす。

「行動量」を増やす。PDCAの「D」を増やす。

 それを大前提として、仕事に取り組んでいきましょう。

「意味」は遅れて理解できる

 今は、日本人全員が物事に「意味」を求めすぎています。

 子どもでも「それって何か意味あるの?」と言います。

 意味を教えずに行動を促すことは、現代ではかなり嫌われることです。

 ただ、ここで言いたいのは、「自分の考えと違っても、言われたことをすべてやれ」ということではありません。

 たとえば、あなたの好きな「歌」を思い出してください。

 その歌の歌詞の意味をわざわざ調べたり考えたりしてから歌を覚えたでしょうか。

 たぶん、違うでしょう。

 先にメロディと一緒に歌詞を覚えてしまって、後から「どういう意味なんだろう?」と考えるという順番だと思います。

 仕事においても、これと似たところがあります。

 疑問に思うことを1つ1つ確かめている人より、与えられたことを素直にやる人のほうが仕事は上達します

 それにより、ビジネスの世界では、凡人でも高学歴の人に勝てるのです。

 まずは、体に覚えさせてしまう。そして、成長したあとに、それを疑ってみる。

 その順番が、「PDCA」でも求められます。

 素直にやってみて、やりながらうまくいかない理由を考える。そういう姿勢を身につけましょう。

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年3月現在で、約2700社以上の導入実績があり、注目を集めている。最新刊『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)の他に、29万部を突破したベストセラー『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)などがある。