仕事に使う時間の10%を
何でも好きなことに使う
さらに、社員の働き方を多様化するための取り組みも余念がない。人材こそが企業価値の源泉であるため、社員が働きやすい環境づくりは急務と捉えられている。重視しているのは、「時間の柔軟性」と「やりがいの醸成」という2つのポイントだ。
リモートワークによる柔軟な働き方の推奨には、コロナ禍で当然のように力を入れている。組織によっては、社員が遠隔地に居住しながらの就業を認めており、長川氏の組織には、沖縄県や島根県で働いている社員もいるという。
クライアントとの付き合い方や仕事の役割分担の見直しを通じて行っている「残業撲滅運動」では、残業を減らした後のやりがい醸成まで視野に入れている。今の仕事を効率化できても、空いた時間に上司から別の仕事を振られたのでは意味がない。そこで試験的に考案されているのが、「10% For Future」という取り組みだ。これは、仕事に使う時間の10%を何でも好きなことに使っていいというものだ。いわば、節約した時間を会社に再利用されないための制度なのである。
「経営では、社員1人につきこれまでの総労働時間を2割減らしても、従来と同じ価値の仕事をする上で影響は生じないと分析している。その減らした2割の時間に向けて、色々な施策を打っていきたい」(長川氏)
こうした一連の取り組みの中で、社員の「満足度」は着実に向上しているようだ。DTCが社内改革を始める直前に行った「従業員満足度調査」(エクスペリエンスサーベイ)では、社員のエンゲージメント(仕事に対するポジティブで充実した心理状態)は、全体の56%に留まっていた。それが直近では、70%台まで向上してきているという。
「社員満足度には、まだ3割の改善余地があり、最終的にはそれをゼロにしたい。我々は今も先進的な取り組みをしている他社に学び続けている段階だと思う」と長川氏は決意を新たにする。
近い将来、多くの企業がDTCに「学び」を求めるときがくるかもしれない。