日本人の投資は「短期、一括、集中投資」になりがち

 ちょっとでも値上がりすると解約して利益を確定したくなる。大きく値下がりすると「どうしよう!」と動揺して、すぐに解約したくなる。

 投資家なら誰しもが陥りがちな心理的罠ですが、投資信託で長期保有を前提とした運用をしているにもかかわらず、この罠から抜け出せない人が結構多いのではないかと思います。

 なぜ、このような罠に陥ってしまうのでしょうか。それは、投資信託をまとまったお金で一括購入する人が多いからです。

「定期が満期になったから」「退職金が入ったから」等で、まとまったお金を手にした人に投資信託の購入をセールスする、こうやって投資信託は残高を増やしてきました。金融機関にとっても少額で投資してもらうよりも、まとまったお金のほうが手っ取り早く手数料が多く入ってきますから、積立投資などという少額でセールス側が面倒なものは勧めないのです。

 しかし、お金を育てるのであれば、「短期、一括、集中投資」ではなく、真逆の「長期、積立、分散投資」がベストです。

 積立投資なら、月々の購入価格がマーケット状況により異なるため、多少相場が上下しても現実に自分がどのくらい儲かっているのか、あるいは損しているのかが一目瞭然ではなく、それが利益確定や損失限定の解約を抑制して長期保有につながります。

 ところがこれが一括購入だと、自分の買値がはっきり分かるので、どうしても解約を招きがちなのです。

 ただ、こうした状況もいよいよ変わってくるでしょう。なぜなら、2018年1月につみたてNISAがスタートし、投資を始める人が増えてきたからです。

 お金を育てる制度として、いかにつみたてNISAがいいのか。次回から、詳しくご説明しましょう。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。
つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言、国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、
個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う複数のファンドアワードで連続受賞。
口座開設数16万人、預かり資産4700億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』他多数。