新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために欠かせないのが、こまめな手指の消毒と、手洗い・うがい。さらに「密集・密閉・密接」の「三密」を防ぐために、人と人が直接会う機会の減少も対策として有効とされている。しかし、こうした新しい生活様式は、さまざまなアレルギーの発症リスクを高める恐れがあるという。赤坂ファミリークリニックの院長・伊藤明子医師に話を聞いた。(清談社 鶉野珠子)
腸内微生物の多様性が減り
腸内環境が変化する
伊藤氏は「過度な消毒・除菌や、人と接する機会が減っているコロナ禍特有の生活は、アレルギーのリスクが高まる恐れがあります」と言う。
「ヒトの免疫細胞の約7割は腸に存在しています。腸内微生物の種類と数、およびバランスが免疫に関わるのですが、過剰な消毒や除菌によって腸内微生物のバランスが崩れてしまうのです。また、ソーシャルディスタンス確保のために人と人、人と自然の交流が減り、微生物と触れ合う機会が減りました。こうした生活が長引くと腸内の善玉菌の種類や数が減り、腸内環境の変化、ひいては免疫力の変化や低下につながることが研究されています」(伊藤氏、以下同)
1989年にイギリスの研究者、デイヴィッド・ストラカン氏の発表から注目されていった「衛生仮説」では、きょうだいが多い子ども、農村部に住む子ども、ペット(毛が生えている動物)を飼っている子どもは、そうでない子どもと比べてアレルギーが少ないことが分かった。人や動物、自然と触れ合う機会が多い子どもほど微生物との交流があり、腸内細菌の種類と数に影響していることが示されたのだ。