「本質的な誠実さ」で人を動かす

ーー加藤さんは歴史がお好きだと聞いたのですが、歴史上の人物で好きなのは誰ですか?

加藤:日本史だと幕末が好きですね。我々のバリューで「至誠」というものがあって、家にも額縁に飾っているんですけれど、それは吉田松陰が祀られている松陰神社で買いました。

「誠実であれば最終的に人は動く」という意味なのですが、キャディの中で一番使うワードの一つで「それ至誠だね」って普通に口に出ています。

ただ、至誠ってだんだん矮小化してしまうので、半年に1回くらいは「至誠を矮小化しないでくれ」と言っています。本質的な意味を分かった上で使ってほしいんです。

たとえば、ミーティングが終わった後に誰かがちょっと残って15秒掃除して椅子を片付けたとします。すると「あの人、至誠だね」と社内チャットで書かれたりするんですね。

それはそれですごくいいことなんですけれども、そればっかりやっていくと「パートナー工場に対して価格交渉をするなんて至誠じゃないんじゃないか」という話しが出てきたりするんですよ。

でも至誠って本質的には「相手にとって重要なことは耳が痛くてもちゃんと言う」ことなんです。本当の誠実さは相手が取引先でも目上の人でもちゃんとフィードバックすることにあります。

誰に対してでもフィードバックをすることができて、また誰からのフィードバックを受け入れることができる。それが至誠の一番基本的な水準で書いてあることです。

パートナー工場さんとの関係で話すと、品質が低いとか諸々の理由で「この工場さんは今のうちのビジネスだと発注できない」という場合があります。

そのときに「頑張れば大丈夫ですので、今からでも何とかやっていきましょうよ」と言うのは全く至誠ではありません。

「今は無理なんですけれど、理由はこれとこれなので、その点を改善したら取引できます。1年かけて頑張りましょう」と言えるのが至誠です。その工場に対して自分の時間も使えないんですけれども、例えば「3ヵ月に1回は進捗確認できますし、アドバイスもできます。ただ、自分たちでやってください。それができたらちゃんと本気でうちもお付き合いします」と向き合って言えることが至誠だと、社内でも結構言っています。

平尾:キャディのエシックス(倫理)みたいなところですね。

加藤:まさに倫理観みたいなところですね。

平尾:邪悪にならず、相手の耳が痛いこともちゃんと言おうよ、と。「それが言えないのは至誠じゃないんじゃないんですか」というところまで社内で共通言語になるのはすごいですね。

加藤:それぐらい大切にしています。

〈第3回へ続く〉