3月に『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』を出版した株式会社じげん代表取締役社長の平尾丈氏。25歳で社長、30歳でマザーズ上場、35歳で東証一部へ上場し、創業以来12期連続で増収増益を達成した気鋭の起業家だ。
そんな平尾氏が超優秀な起業家として注目しているのが、キャディ代表取締役の加藤勇志郎氏。マッキンゼー入社後、マネージャーとしてグローバルで製造業メーカーを多方面から支援するプロジェクトなどを経験。2017年に「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」を企業理念に掲げ、キャディを創業。全国のパートナー加工会社を集約し、独自開発の原価計算・最適発注・生産管理システムを用いた加工品製造サービスを提供している。Forbes JAPANによる「日本の起業家ランキング2022」では2位に輝くなど、まさに最注目の起業家だ。
不確実性が高く、前例や正攻法に頼れない時代。そのなかで圧倒的な成果を出しているおふたりに「起業家の思考法」について語っていただいた。
連載第第2回は、加藤氏の「自分らしさ」に対する考え方と、大切にしている言葉をお伝えする。
(写真 株式会社じげん・津田咲 構成 林拓馬)
基本的にフレームを疑う
平尾丈(以下、平尾):加藤さんは「自分らしいやり方」でこだわっている部分はありますか?
加藤勇志郎(以下、加藤):僕は最終的に出る価値しか見ていないので、究極のところやり方は何でもいいと思っています。自分らしいやり方じゃなくても、それが一番よければやるという。「自分らしい」を変えられる体質なのかもしれません。正直、1兆円企業を作る時に、最初から最後まで同じやり方だとやばいじゃないですか。やはりラーニングがすごい重要だと思います。
あとは重要視している考え方として「最初から仕組み化しようとするとチープになる」と思っているんです。ザ・モデル的なやり方に沿うと1.3倍を綺麗に継続するのはやりやすくなります。
けれども「現状をぶっ壊して2倍、3倍にし続ける」場合には基本的に足かせになると思うんです。我々の規模だと綺麗に伸びるのではなく、2倍3倍っていうのを常に求めてぶち抜けるための設計をしなければいけません。
平尾:BtoBではありますが、B2Cのグロース戦略に似ていますよね。面白いです。
加藤:方程式や理論がたくさん存在するのはすごくいいと思いますし、経営もしやすくなっているんですけれど、この10年や20年にできたフレームワークがほとんどなので、それが本当に経営の王道と言えるのかというと、僕はまだ言えないと思います。基本的にフレームを疑うっていうのはありますね。
我々の場合「モノづくり産業のポテンシャル解放」をミッションに掲げているんですが、それってグローバルで見た時に金額規模としては数十兆円が絶対に必要です。そこから逆算すると1.3倍の成長では50年ぐらいかかるんですね。それは嫌だなと思って。自分が80歳で達成しても嬉しくないので、50歳くらいで達成したいと思うと、今から2倍3倍でやらないといけない。それは普通のやり方では無理だと思うんです。
平尾:加藤さんの超巨大なTAMを選びつつ、その時点でハイポテンシャルとロングタームの両方を狙う他の起業家より2段階3段階上に行かれてる感じがしました。
加藤:せっかく自分の人生をかけるんだったら、すごくでかい課題を解決したいとずっと思っていました。小さく成功するよりも、大きく深い課題を掘ったまま出て来れなくて死ぬ方がいいと思うくらいです。
ある意味、王道の王道を頑張っていくと、最終的に無理だったっていうこともあると思います。近道を通らないと力尽き果てて死んでしまうという。
平尾:今、組織のダイバーシティが叫ばれているので、働き方のダイバーシティも必要だなと思って別解力のベン図に「自分らしいやり方」を入れました。でもたしかに「自分らしさ」は仕事に必要ないと考える人もいますよね。
加藤:私も「自分らしくあろう」と思っているかと言われると、思っていません。ただ、誰でもできることは別にやる必要ないし、30年40年かけてでも一番大きなインパクトが出ることをやりたいと自分として決めています。それが結果的に「自分らしいやり方」とか「別のやり方」に通じて、別解にたどり着いているのかもしれません。
キャディ株式会社代表取締役
東京大学経済学部卒業後、外資系コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。同社マネージャーとして、日本・中国・アメリカ・オランダなどグローバルで、製造業メーカーを多方面から支援するプロジェクトをリード。特に、重工業、大型輸送機器、建設機械、医療機器、消費財を始めとする大手メーカーに対して購買・調達改革をサポートした他、IoT/Industry4.0領域を立ち上げ時から牽引。100年以上イノベーションが起きていない製造業の調達分野における非効率や不合理を、産業構造を改革することで抜本的に解決したいと思い、2017年11月にキャディ株式会社を創業。モノづくり産業の本来持つ可能性を解放することをミッションに、テクノロジーによる製造業の改革を目指す。