「守・破・離」と別解の共通点
宇佐美:この図を見ながら、自分はどういうアプローチでやってきたか考えました。
平尾:ぜひ教えてください。
宇佐美:基本的には「優れたやり方」をベースにしながら、自分の考えに基づく「自分らしいやり方」を取り入れる。つまりベン図の「コモディティ」の部分から「別のやり方」の方向にどうやって行くかということを意識していたと思います。
平尾:なるほど。私は完全に「優れたやり方」から「別のやり方」に矢印が向いているタイプです。みんなが「優れたやり方」をやるから、自分は嫌だと。もともと人と同じことをやるのが嫌なこともあるので、「みんなこうやるだろうな、だったら自分はあえてこうやろう」と。でも、「別のやり方」に行き過ぎないようにしていますね。「優れたやり方」の要素が薄まっていって失敗したことが何度もあるので。
宇佐美:そうですね。
平尾:「別のやり方」が得意な起業家はたくさんいますが、ベンチャーキャピタルの人たちは、「別のやり方」だけを見ていません。あくまでも「優れたやり方」が大事で、そのうえでの「別のやり方」だと。
宇佐美:まず「優れたやり方」という「守」がないといけないですよね。そういう意味では、これは「守・破・離」なのかもしれませんね。
平尾:そうかもしれませんね。「離」が「自分らしいやり方」ですよね。
宇佐美:そう。「優れたやり方(守)」から始まり、そこから「別のやり方(破)」へ向かって、最後は「自分らしいやり方(離)」を大きくしていく。そういうアプローチなのかもしれませんね。
平尾:なるほど。みなさんそれぞれ違いますね。私は人と同じやり方があまり好きではないので、「優れたやり方」からいかに「ずらして」いくかを考えるやり方ですが、他のスタイルの起業家と結果的に同じ答えになることが多いんです。入口は違っても、終着点をプロットすると同じあたりに収束する。このフレームを作ったことで、いろいろな人からさまざまなフィードバックをいただけて非常に面白い体験をしています。なかには、新しい「優れたやり方」を追求し続ければ、「別のやり方」の要素はいらないという人もいました。
宇佐美:でも、新しいやり方を目指しているということは、「別のやり方」を目指しているということですよね。
平尾:そうなんです。「別のやり方」を内包して考えているということですね。
宇佐美:最初からベン図が重なっている人もいるんでしょうね。最初はそれぞれの要素が離れていたり、もしくはほんの少ししか重なっていない人が、それぞれの要素を近づけていくことで別解が生まれるのかもしれませんね。
CARTA HOLDINGS 代表取締役会長兼CEO
1996年、早稲田大学商学部を卒業後、トーマツコンサルティング(株)(現デロイトトーマツコンサルティング)に入社。大手金融機関の業務改善プロジェクトやシステム化プロジェクトにコンサルタントとして従事。その後ソフトウェアベンチャー企業への転職を経て独立を決意し、1999年に(株)アクシブドットコム(のちにVOYAGE GROUPへ社名変更)を友人と創業。代表取締役社長兼CEOとして創業以来19年連続での増収を牽引。2001年サイバーエージェントと資本業務提携し、2005年から2010年までサイバーエージェントの取締役も兼務し、技術部門担当役員として技術部門の強化に携わる。2012年にサイバーエージェントよりMBOさせ、2014年マザーズ上場、2015年東証一部へ市場変更を推進。2019年のCCIとVOYAGE GROUPの経営統合に伴い、(株)CARTA HOLDINGSの代表取締役会長に就任。