「#維新に入れたら貯金に課税」というフレーズが5月の連休中、Twitterでトレンド入りした。その背景には、日本維新の会の“お家騒動”と、それに対する有権者の反発がある。維新は、選挙公約とは正反対と思える政策議論を選挙後に繰り広げたり、「2人の政調会長」が表舞台でいがみ合ったりと、野党第1党を視野に入れた政党とは思えない体たらくぶりを見せている。(イトモス研究所所長 小倉健一)
「#維新に入れたら貯金に課税」が
Twitterトレンド入りした理由
ゴールデンウィーク中、あるフレーズが異例の「トレンド入り」を果たした。「トレンド入り」とは、Twitterで短期間に数多くツイートされ、同サービスの「トレンド」として表示されることだ。
そのフレーズとは、「#維新に入れたら貯金に課税」というものだ。「維新」とは、昨秋の衆議院選挙で議席を3倍以上に増やす躍進を果たした、「日本維新の会」を指す。
私が確認できただけでも2万件を超えるツイートがなされ、今なお、多くの人に「#維新に入れたら貯金に課税」という投稿が繰り返されている。
政敵のちょっとした誤記やミスにはこれでもかと集中砲火的な反論を繰り出す維新の議員たちだが、このツイートにはほぼ無反応だ。つまり、反論できないでいる。
しかし、維新の衆院選時の公約を見ても増税という言葉はなかった。最近公開された政策を説明する漫画冊子では、正義の味方である「維新ジャイ」が敵の言い分をろくに聞かずに必殺技で“瞬殺”する描写が続く一方で、「増税」という言葉はない。
むしろ、先の衆院選前に発表された政策提言(事実上の選挙公約〈マニフェスト〉)である「維新八策」では、「減税と規制改革、日本をダイナミックに飛躍させる成長戦略」と大きく掲げられている。また、維新のマニフェストサイトには、維新が戦う対立軸として「とりあえず増税で景気後退・格差拡大」と訴えられている。「成長できる減税」という文言も大きくある。
これらを一般の有権者が見れば、維新は増税を否定し、減税によって日本経済を成長させることを選挙戦で訴えていると思うはずだ。
果たして、維新は先の衆院選で大躍進を遂げた。このままいけば政権を狙える位置にまで勢力を拡大したのだ。維新に投票した有権者の多くは、維新が公約通りの政策を掲げて、岸田政権に対峙すると考えたはずだ。
しかし実態は、有権者の期待とは全く違うことになってしまった。
その背景には、維新党内における“お家騒動”がある。選挙公約とは正反対と思える政策議論を選挙後に繰り広げたり、「2人の政調会長」が表舞台でいがみ合ったりと、野党第1党を視野に入れた政党とは思えない体たらくぶりを見せているのだ。