この背景にはコーチのスキル不足だけでなく、親御さんの意識もあると伴氏は指摘する。たとえばサッカーのコーチ陣が楽しくプレーすることを推奨し、勝ち負けではない価値観を指導していても、グラウンドで笑っている子どもの姿を見て、「負けて笑っているのはいかがなものか」「もっと躾の部分をやってほしい」となることも。

「自分の子どもには、大人が期待するような行動をとってほしいと願う親御さんは多いです。それは家でも学校でも、運動の場でも同じ。ですが、なかなか親の言うことを聞かなくなっていることもあって、コーチに担ってほしいという要望があるんです。親も一生懸命なんですが、結果的にネガティブな言葉を多くぶつけられるという現状があります」

スポーツでクリエイティビティを
発揮するポジティブ感情とは

子どもに「何やってんだ!」は逆効果、ポジティブ体験が乏しい日本のスポーツ

 ではなぜ、ネガティブな言葉は良くないのか。伴氏が教えてくれた。

「ネガティブな感情にはトラブルシューティングの機能があります。脳はネガティブな感情を出すことで、『何か対処しなくてはならない問題が発生しているよ』『身を守る必要ことを優先してよ』と伝えようとします。このときに脳で起こることは、思考力の低下です。危機的状況から即座に脱出する場合、考えている時間は命取りになりえるからです。

 大人はこの時間から何かを学んでほしいと願って、良くない点を咎めるのでしょうが、まだ熟成できていない子どもたちがこの言葉に晒されると、どのようにこの場を“やり過ごすかの方向”に気持ちが行き、逆効果になります。これが続くと、良いパフォーマンスを目指そうという思考ではなく、逃げの思考になるんですね」

 防御本能が優位に働き、サッカーを上手くなろうという発想にならないのだ。