稲垣氏によるとSNSは「ひとりじゃない安心感」を十分満たしているツールであるという。誰かとつながることや、自分と同じ趣味を持つ人を探すことができるため、特にInstagramなどは若い女性の利用率が高い傾向にある。また、プリントシール機もその例に漏れない。

「プリを一緒に撮ることは仲間の証明にもなりますし、SNSに載せて『いいね!』やコメントをもらうこともできる。SNS以前でも、プリ帳に貼って持ち歩くことが、そうした機能を担っていました。かつて皆が使っていたインスタントカメラは当時の多くの女子高生も持っていましたが、それも気軽に『仲間感』を残せたからだと思います。いつの時代も、『仲間感』『自己肯定感』を叶える商品やサービスに、女の子は魅力を感じるのです」

 ツールは変わるが、人とのつながりが感じられることと自己肯定感という2つの要素はほぼ普遍であるのだ。まずはこの前提を理解することが必須という。

現地調査とSNSで
流行や傾向を把握

 また、実際に女性が集まる場所に足を運ぶことも、「カワイイ」を理解することにつながるという。

「女の子の流行や傾向を知るためには、例えば渋谷、原宿、新大久保といった若い世代が集まる街やアミューズメント施設、ファストフード店などに行き、ファッションや持ち物を見たり、会話に耳を傾けたりするのが一番早いです。『そんなところに行って、浮かないかな……』と心配する必要はありません。適度な距離感であれば、女の子は別にあなたを気に留めませんから。これ以外には、SNSで若年女性が多く使うハッシュタグを見ていくなどすると企画を立てるヒントになります」

 稲垣さんのおすすめのハッシュタグは「#JK」「#LJK(ラストJK)」「#映え」「#エモい」などだ。また、観察と同時に、実際に生の声を聞くことも稲垣氏はすすめる。

「最初は身内や知人の紹介など、身近な方からでよいので、生の声を聞いてみてほしいです。もちろん、ターゲットユーザーを集めて定期的なグループインタビュー等をすることで、流行の移り変わりを感じられるでしょうし、商品へのフィードバックをもらえるでしょう。私の経験上、女性たちが『それ欲しいかも』ではなく『うわー、めっちゃ欲しい!』とテンションの高い反応を得るケースでないと、ヒット商品としての見込みは薄いでしょう」

 このようなノウハウをもとに、稲垣氏は商品開発を行ってきた。この手法は、プリントシール機以外でも効果を発揮したという。