中国では、物価上昇が大きな問題となる。

 2011年7月の消費者物価指数は、前年同月比6.5%の上昇となり、大きな問題だとされた。これは、経済危機後に中国がとった景気刺激策の影響だという意見も聞かれた(この見方が正しいかどうかは、後で論じる)。そして、中国政府が引き締めに転じざるをえなくなった大きな理由がここにあると指摘された。

 中国では、インフレは経済的な問題であるだけでなく、政治問題にも発展する。

 事実、1989年の天安門事件は、物価上昇によって生活を脅かされた人々の政治不満が大きな原因だったと言われる。1年前の88年には、消費者物価上昇率が20%を超える値になっていたのである。このため、政府に対する不満と抗議が、学生にとどまらず、一般労働者や商店主に広がったのだと言われる。

中国物価統計と最近の動向

 物価のデータは、中国国家統計局のサイトで入手することができる。

 国家統計局の統計サイトは、最近改定されて、見やすくなった(とくに、「統計分析」のセクション)。

 ただし、時系列データを見るには依然不便だ。この目的のためには、海外のデータサイトを用いるのがよい。

IMF(国際通貨基金)のWEO(世界経済見通し)には、1991年からの実績データと、2017年までの予測値がある。これを図示すると、図表1のとおりだ。

 中国の消費者物価指数は、1993年から95年にかけては、年率2桁の上昇率を示した。そのあと沈静化し、90年代の終わりから2000年代の初めにかけては、マイナスにもなった。

 その後、04年頃から再び上昇が始まり、09年にマイナスになったことを除けばプラスの伸びが続いた。とくに10、11年にはかなり高くなった。年間平均値で見ると、11年が5.4%だった。年末値の対前年比で見ると、10年が4.6%、11年が4.1%だった。