ウクライナ危機や円安、穀物やエネルギー資源の価格上昇、各地の異常気象や中国の食糧買い増しも相まって、世界の食糧危機・争奪戦が熾烈(しれつ)化するだろう。わが国ではロングセラーのスナック菓子、「うまい棒」が42年の歴史で初の値上げに踏み切ったし、アサヒビールやサントリーも値上げに踏み切るという。パンやうどんなどの価格も追加的に引き上げられる可能性が高い。国内企業の対応を見ていると、「国内需要が弱いため、極力、値上げは避けたい」との考えが多く、値上げはまだ初期段階にあると考えられる。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
一部の国では食糧危機というべき事態も
世界的な物価上昇圧力はさらに高まる
5月15日までに、インド政府は国内の需要を優先させるため小麦輸出を一時禁止した。これまでインドは、ウクライナ危機の発生直後にアフリカ諸国やトルコなどへの小麦輸出拡大を目指した。
しかし、インドでの天候不順による減産懸念もあり、国内需要をまず優先させる方針に転換した。インドでは小麦価格の高騰に不満が高まり、政府は輸出禁止を余儀なくされた。
小麦以外の穀物や食用油の輸出を制限する国も増えている。一部の国では食糧危機というべき事態も発生している。ウクライナ危機や異常気象など複合的な要因によって、穀物などの価格は上昇し、世界的な物価上昇圧力はさらに高まるだろう。
それは、わが国の家計に非常に大きな負の影響をもたらす。今後、円安と、穀物やエネルギー資源などの価格上昇によって、輸入物価は上昇基調で推移する可能性が高い。日常生活に欠かせない食品や電力などの価格はさらに上昇するだろう。
コストアップに対応して収益を守るため、値上げに踏み切る企業も急速に増加し始めた。一方で、わが国経済の実力は低下しており、実質ベースで賃金が増えていない。私たちの日常生活の苦しさは、一段と増す展開が危惧される。