昨年、筆者は今年の株式市場を展望して、四つのリスク要因を挙げた。「コロナリスク」「地政学リスク」「パウエルリスク」「岸田リスク」だ。

 新型コロナウイルスについては、欧米では経済のマイナス要因としての存在感が後退したが、日本は経済の再開ペースが遅い。加えて、中国がゼロコロナ政策の失敗によって経済が失速するなど、最大ではないがマイナス要因になっている。

 地政学リスクでは、ウクライナ紛争が資源価格の高騰を通じてインフレをもたらし、ジェローム・パウエル議長が率いる米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め(パウエルリスク)につながっている。ただ、米国の経済そのものは、エネルギーや軍事、穀物などの業種が活況を呈していて、それほど経済の足を引っ張っていない。

 現在、株価下落の最大の原因になっているのは、インフレの抑制に力が入っているFRBの金融引き締めである。これは「いずれ確実に来る金融引き締め」として筆者が予想した「パウエルリスク」そのものなのだ。ただ、5月に異例の0.5%幅の利上げを行い、さらに6月、7月にも同幅の利上げを示唆するなど、昨年末時点で想定したものよりも強いインパクトのものとなっている。

 率直に言って、米国の金融引き締めに打ち止めのめどが立たないと、株価下落終了の見通しが立たない。

「岸田リスク」として最大のものは、来年の日本銀行の正副総裁の人事を含めて岸田文雄首相が日銀の金融緩和政策を転換するリスクだが、これは影響がまだ本格化していない。ただ、日本の経済と株式に関する固有のリスク要因が存在することには注意しておきたい。

FRBの金融引き締めが
「やり過ぎ」に陥るリスク

 前述の通り、株価の下落傾向が収まるには、FRBの金融引き締めの終了が見えてくる必要がある。