「社内プレゼン」は、ビジネスパーソンにとって必須のスキルです。どんなによいアイデアがあっても、組織的な「GOサイン」を得なければ一歩も前に進めることができません。そのためには、説得力のあるプレゼンによって決裁者を説得する技術が不可欠なのです。
そこで役立つのが、ソフトバンク在籍時に孫正義氏から「一発OK」を何度も勝ち取り、独立後、1000社を超える企業で採用された前田鎌利氏の著書『完全版 社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)です。
本書では、孫正義氏をはじめ超一流の経営者を相手に培ってきた「プレゼン資料」の作成ノウハウを、スライド実例を豊富に掲載しながら手取り足取り教えてくれます。読者からは「大事なプレゼンでOKを勝ち取ることができた」「プレゼンに対する苦手意識を克服できた」「効果的なプレゼン資料を短時間で作れるようになった」といった声が多数寄せられています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、社内プレゼン資料で有効なたった一つのアニメーションについて解説します。

社内プレゼンに「アニメーション」を多用するとダメな理由写真はイメージです Photo: Adobe Stock

アニメーションの多用は逆効果

 紙芝居のようにスライドをめくる、挿入した文字をズームして強調する……。

 プレゼン・ソフトには何種類もの「アニメーション」「画面切り替え」の機能がついていますから、ついつい使ってしまいがちですが、これらの演出のほとんどは、社内プレゼンには不要です。だから、「基本的には使わない」というスタンスでいるくらいでちょうどいいでしょう。

 もちろん、会社説明会や株主総会、営業プレゼン資料などでは、スマートなスライドの切り替えや面白い文字の動きなどのエフェクトを多用することで、聞き手の気をそらさず、インパクトを与えるために、アニメーションなどを活用する技術を磨く必要があります。

 しかし、決裁を取るための社内プレゼンではアニメーションなどの多用はNG。余計な演出は必要最低限にとどめて、最短距離で提案を終わらせるのが正解なのです。

 また、社内プレゼンでは、ディスカッションのときに「4ページ目の資料をもう一度見せて」などと言われることが多々あります。そのときに、該当スライドを表示する度に、画面切り替えでオーバーな演出がされたり、1つずつ文字やグラフを表示されたりすると、決裁者は完全に興醒め。「そんなところに労力をかける必要はない」とマイナス評価につながるだけです。

 めざすのは、シンプルでロジカルなプレゼン。そして、ディスカッションで深い議論をすることです。そのためには、余計なアニメーションなどは逆効果なのです。

決裁者の目線を確実に誘導する

 もちろん、アニメーションなどを使ってはならない、というわけではありません。決裁者の目線を誘導したり、理解を助けるために効果的な場合には使用すべきでしょう。

 ただし、社内プレゼンで使用していいアニメーションはきわめて限定的です。基本的には、この2種類だけを使うことをおすすめします。

〈使用するアニメーション〉
●Powerpoint:フェード
●Keynote:ディゾルブ

 名称は違いますが、この2つは同じアニメーション。アニメーションの設定をかけたテキストやグラフが、フワッと表示される機能です。決裁者にインプットしたいテキストやグラフを強調するのに効果的なアニメーションです。過度なエフェクトではなく、自然な動きなので使い勝手のよい機能といえるでしょう。

 下図は、このアニメーションの使用例のひとつです。

社内プレゼンに「アニメーション」を多用するとダメな理由

 まずグラフだけを見せたうえで、グラフが意味することを表示し、さらに「だから、こうすべき」というキーメッセージを見せることによって、決裁者の目線を誘導するわけです。

 口頭で伝える内容とスライドに表示する内容を一致させることで、1つずつ確実に決裁者の理解を得ることができますし、参加者全員の理解の進度を揃えることができるというメリットもあります。

 このように、社内プレゼンでフェード、ディゾルブを使うのは非常に効果的です。極論すれば、社内プレゼンではこのアニメーションさえ使いこなせれば十分。これ以外のアニメーションは”捨て”てもOKなのです。

(本稿は、『完全版 社内プレゼンの資料作成術』より一部を抜粋・編集したものです)