人は物事を覚えていると思っていても、実は覚えていない。聞いているといっても、聞いていない。想像以上にいい加減な脳の性質を理解すれば、仕事の質と効率は劇的に向上する。宇都出雅巳氏の新著『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』からの一部抜粋で、集中力をアップさせて仕事のミスを防ぐ“脳のメモ帳”ワーキングメモリの鍛え方を伝授する。
1日経つと覚えたことの
3割しか覚えていない
「記憶」そのもののミスである「メモリーミス」。「上司の指示を忘れる」「書類をどこに置いたか忘れる」「人の名前を忘れる」といった、おなじみのミスです。
なぜ人はメモリーミスを犯すのでしょうか?
もちろんミスをしようと思う人はいません。メモリーミスは記憶に対する「期待」と「現実」のギャップから生まれます。あなたの「しっかり覚えた!」「忘れないだろう」という目論見に反し、脳が思いのほか早く、あっさり忘れてしまうことが原因なのです。
下図は、記憶に関する研究の草分けともいえる「エビングハウスの忘却曲線」と呼ばれるものです。
勉強術の本などで「繰り返し」の重要性や、効果的な復習のタイミングの根拠として引用されたりすることも多いので知っている人も多いでしょう。
グラフの縦軸は「節約率」と呼ばれ、最初に完全に記憶する手間(時間・回数)に比べて、どれだけ再び完全に記憶するまでの手間が節約できたかを表す指標です。いわば、記憶の保持率、逆に考えれば忘却率ともいえます。