5社を統合して
新会社「サントリー」に一本化
関灘 サントリーホールディングスは、国内酒類事業を統括する「サントリーBWS」、ビール事業の「サントリービール」、ワイン事業の「サントリーワインインターナショナル」、ウイスキーやチューハイなどの「サントリースピリッツ」、国内営業の「サントリー酒類」の5社を統合して,2022年7月に新会社「サントリー」に一本化することを発表しています。その新会社で、新規事業を始めるなど挑戦が計画されているのでしょうか。
鳥井 酒類の製造はある意味、伝統的なものづくり要素が強いので、酒類や飲料とまったく離れた領域のものを、「出島」をつくって急に新規事業として始めることは難しい面があります。
ですから、新規事業については、サントリーホールディングスで考えることにしています。たとえばホールディングスのデジタル部門と傘下のグループ会社で連携した新機軸のエナジードリンク「ZONe」(ゾーン)などは、中高年では思いつかないだろうと思いきや、そんなに若くもない社員が、いいアイデアを出してくれている。その社員は、高校生の行動や嗜好をよく見ているんですね。そうすると、「こういうのがいいんじゃないかな」という、従来にない発想が出てくる。
関灘 サントリーは、自然を大事にしてきたのと同じように、人間を大事にされているように感じます。生活者の気持ちを考えるとき、他の企業がニーズを探る、観察するというのとはもっと次元の違うものになっているように思います。生活者になりきる力、憑依する力といえば良いのでしょうか。
鳥井 最近よく思うのは、飲料にしても酒類にしても、ものづくりの技術の進歩が著しい。20〜30年前は、「これ、あんまりおいしくないな」という商品も世の中にたくさんありましたが、最近はほとんどありませんよね。
ウイスキー、ワイン、ビール、自然ベースのものにせよ、飲料、チューハイのようなブレンディングのテクノロジーの賜物にせよ、あらゆるカテゴリーでテクノロジーの恩恵があって、さらにおいしいものができていく時代になったのだなと思います。「人と自然と響きあう」「やってみなはれ」といったサントリーが大切にしてきた創業の精神を活かして、新しい時代にふさわしい挑戦を続けていきたいと思っています。
関灘 「無理だ」といわれていた本格的な国産ウイスキーの製造を、創業者がとことん追求し、その後、マスターブレンダーを鳥井信吾副会長が受け継がれるなど、代々の経営陣も品質を大事にされてきました。
お伺いした、ものづくりへの情熱や、サントリー独自の精神が、最新のテクノロジーと相まって、これからも次々と新しい価値を生み出し続けられるものと、確信しております。ありがとうございました。