今回のロシア侵攻で、グラマリーのようにウクライナに開発・運用拠点を置く企業は対応を迫られました。どの企業もグローバルにリソースを分散して、できるだけ被害が小さくなるよう、いわゆるBCP(事業継続計画)を実施しているようです。

 グラマリーは、自社サイトでウクライナへの支援と寄付の呼びかけも行っています。また、2014年以降にロシアとベラルーシから得た収益と同額の500万ドルを、ウクライナの人々を支援する団体や基金に寄付すると表明しました。グラマリーでは他のクラウドサービスと同様、ロシアとベラルーシからサービスが利用できないようにブロックしていますが、さらにもう1つ、面白い取り組みをプロダクトに取り入れました。

 グラマリーは、英語の文法やスペルチェック機能を提供するだけでなく、より読みやすく洗練された表現ができるようアシストしてくれるサービスとして、英語話者にも広く利用されています。そこでグラマリーを利用して今回の侵攻について書こうとするユーザーに対し、正しい情報へ誘導するメッセージとリンクを製品の中に組み込んだのです。

ロシア侵攻下でも
ウクライナは取り組みを止めない

 ウクライナでは、侵攻下でも新たな産業を生み出す取り組みは歩みを止めていません。去る3月31日には、ウクライナのスタートアップによるピッチ(プレゼンテーション)コンテストがオンラインで開催されていました。

 コンテストには正直、これは失敗するだろうという事業アイデアも多かったのですが、面白いピッチもありました。最優秀となった医療系スタートアップは、日本企業ともすでに戦略的提携を結んでいるとのことで、玉石混交の中にも光る起業家がいて興味深いイベントでした。

 何より、安全かどうかが分からない作業場のような場所から「軍に使ってもらうためのドローンをつくっています」といったピッチもあって、現在進行形のウクライナの状況を映したコンテストとしての生々しさがありました。「この状況下でスタートアップピッチをやる主催者もどうかしているのでは」とは思わないでもないのですが、参加するスタートアップも大勢いたことでイベントは3時間にも及び、非常に大きなダイナミズムのようなものを感じました。