大正製薬の自動販売機将来薬局やドラッグストアが少ない地域に置かれれば、特に重宝されるかも

大衆薬最大手の大正製薬が5月31日、東京・JR新宿駅構内に国内初となる大衆薬の自動販売機を設置した。ドラッグストア前に置いたのには、理由がある。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

自販機で「パブロン」「ナロン」など
大正製薬の商品が買えるように

 大衆薬(OTC医薬品)国内最大手の大正製薬は東京・JR新宿駅構内に大衆薬の自動販売機を設置し、5月31日から自販機による販売を開始する。

 扱うのは、第2類医薬品、第3類医薬品、医薬部外品に分類される大正製薬の大衆薬のうち、比較的に緊急性のある約30品目。具体的には大正製薬おなじみの風邪薬「パブロン」、解熱鎮痛薬「ナロン」、鼻炎治療薬「クラリチン」などで、交通系ICカードで購入できる。

 ジュース、軽食類の自販機は世にあふれているが、第3類医薬品以上の大衆薬を扱う自販機は、実は今回が国内初となる。大正製薬は、新技術やビジネスモデルの社会実装に向けて実証実験をして規制の見直しにつなげていく「新技術等実証制度(規制のサンドボックス制度)」の枠組みを活用し、国から実証計画の認定を取得。自販機を8月末まで設置し、商品ニーズや改善点を検証する。

 大衆薬はすでにインターネット販売が行われているが、気軽に購入できる半面、手元に届くまでのタイムラグがある。実店舗販売では資格者(薬剤師または登録販売者)の人材確保難という課題があり、販売に対応できる店舗の広がりに限界がある。自販機はその両方の課題を克服する販売チャンネルとなり得ると大正製薬は判断したようだ。

 ただし、缶ジュースを自販機で買うときのように「ワンタッチで即購入」とはいかないし、日中の限られた時間帯(午前10時~午後6時)しか稼働しない。しかも、今回設置されたのは、IR東日本系のドラッグストアからわずか数メートルの場所だ。

 一見どれも不可思議な設定ではあるが、実はこれによって大衆薬ならではの数々の制約をクリアさせている。