東京電力ホールディングス(HD)は、持分法適用関連会社で国内最大級の再生可能エネルギー専業会社、ユーラスエナジーホールディングスの株式を豊田通商へ1850億円で譲渡すると発表した。東電HDは豊通側からの猛アプローチを拒み続けていたのに、なぜ今売却に踏み切ったのか。その裏事情に迫った。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
東電HDが持ち分40%を譲渡し
豊田通商の100%子会社に
ユーラスエナジーホールディングスは1986年、総合商社トーメン(現豊田通商)グループの電力事業としてスタート。国内外で太陽光・風力発電事業を展開し、発電容量は331.4万キロワットで、そのうち国内は陸上風力を中心に大型火力発電所約1基分に相当する103.3万キロワットを保有する。
日本最大級の再生可能エネルギー専業会社であるユーラスの株主構成は、豊通60%、東京電力ホールディングス(HD)40%。東電HDは5月26日、保有する40%の株式を1850億円で豊通に譲渡することを決めた。
本誌2021年11月27日号で既報の通り、ユーラス関係者によれば、トヨタ自動車は19年ごろから東電HDが持つユーラスの株式の取得を目指していた。足かけ4年にわたるトヨタグループの執念が実ったといえよう。
トヨタは脱炭素時代のモビリティービジネスで生き残るために欠かせない再エネを、ユーラスを通じて手中に収めようとしていたのだ。トヨタはグループ会社である豊通に対し、東電HD保有のユーラス株取得にプレッシャーをかけていた。
これに対し、東電HDは豊通側からのアプローチをかわし続けていた。世界的な脱炭素シフトで、国内最大級の再エネを保有するユーラスは、東電HDにとって「金のなる木」になり得る貴重な存在。20年に豊通側から買収の打診を受けたが「売るつもりはない」と断ったという。