VTuberはなぜ人気なのか
生身のYouTuberとの違い

 拡大するVTuberシーンに関しては「根岸智幸のメタバースウォッチ」という記事に詳しいが、これによるとVTuber関連の数字はおよそ右肩上がりで、たとえばVTuber自体の人数は2018年9月で5000人だったものが、2021年10月には1万5000人を超えている。また、2021年度のYouTubeのスパチャ(投げ銭)世界ランキングは、トップ1~9位を日本のVTuberが独占し、6位以上は1億円超えとのことである。
 
「盛り上がっている」ということはわかるのだが、VTuberに魅せられていないものとしては、それがなぜ人気を博すのかが純粋な好奇心として知りたい。そこで筆者なりにVTuberについての調査と分析を行った。
 
 まず、VTuberの個性は2つの要素によって構成されている。

「キャラデザ」と「トーク(中の人)」の2つである。このどちらを欠かしてもVTuberたり得ないが、キャラの人気のありようはそれぞれで、主に「キャラデザかトークが秀でている」か、「双方のバランスがいい」かである。配信の企画自体が面白くて人気を博しているVTuberもいる。
 
「トークが面白いだけなら、生身の配信者と変わらないのでは?」という疑問もあるのだが、「キャラが画面内で動いてしゃべっているのはやはりいい」ものらしい。
 
 これはあくまで仮説だが、VTuberはあくまで2次元の制作物として提供されているので、人間くささがいいあんばいに薄められていることが、VTuber人気の一因ではないかと見ている。
 
 たとえば「アイドルは排泄をしない」という、アイドルを神格視するファンの心理を表す、やや冗談めいたフレーズがある(昨今のアイドルブームでは、人間くささこそがアイドルの売りになってきてはいる)。しかし実際、アイドルは人間だから当然排泄はする。
 
 VTuberは、トークを聞いているとその中の人の存在がやはりうかがえはするのだが、VTuber自体は排泄とは無縁の存在である。視聴者は、自分と同じ人間ではないVTuberに対して、競争意識が働かない。生身のYouTuberなら、視聴者のほぼ無意識下での競争意識によって嫌われることが往々にしてあり得る。たとえば「かわいいから」「金持ちだから」などである。
 
 VTuberはこうした嫌われ方をし得ない。つまりVTuberは敵を作りにくいのだ。視聴者は競争意識や嫉妬などをすべて排して、純粋な「好きか嫌いか」によって判断するのが可能となっている。
 
 そしてVTuberのファンは「これは二次元創作物で、我々はそれを楽しんでいる」という暗黙の結束をすることになる。これもただのアイドルのファンとはやや違う。「○○は本当にすてきだよね」「私たちで応援しようね」に加えて、「作り物のVTuberってわかってるのに、実在する人みたいに応援するのがいいんだよね!」という気持ちが共有されている。これは筆者も自身で体感した。
 
 結束が強まったファンはSNSで応援の気持ちを発信し、VTuberの配信に訪れて、コメントや投げ銭で配信を盛り上げる。SNSや配信が盛り上がればVTuberのカリスマ性は増し、さらにファンが増えていく構図である。