「ゲームやアプリには課金しない」。スマートフォンでの課金が手軽な現代において、そう心に決めているユーザーは多いだろう。しかしサービス側は、あの手この手で庶民を課金に誘う。人はどのように課金にハマっていくのか。筆者による実体験をつづる。(フリーライター 武藤弘樹)
40代の約4割がスマホゲームをプレー
課金の誘惑が多い“ソシャゲ”
スマホでゲームをたしなむ人の割合に関する調査は散見される。それらを見比べてみると正確な数値は一致しないが、概ね若い世代はゲームをプレーしている割合が多く、上の世代に行くにつれて減っていく。そして筆者が属する40代は、大体4割前後がスマホゲームをプレーしているようである。
筆者はゲーマーで、主に家庭用ゲーム機やパソコンで対人対戦を好んでやってきた。スマホゲームもかじるが、息抜き程度に1人プレーのものをちょっとやるくらいであった。
しかし約10カ月前にソーシャルゲーム(ソシャゲ)に手を出し、どっぷりハマってしまった。今では総勢60人ほどの、王国ランキング第2位の一大ギルド(チームのようなもの)のリーダーを務めるまでになった。ゲーム内に王国は1000個以上あるが、それでもこれは立派なことである。
筆者は、このゲームに毎月課金している(※「課金」の正しい意は「支払いを課せられる」であるが、昨今使われている「支払う」の意の方で、以下用いることをご了承願いたい)。
ゲームを始めた当初は、課金する気など毛頭なかった。課金することに対する強い抵抗すらあった。
しかし、筆者や何人か他のユーザーは課金に目覚め、徐々に課金額を膨らませていった。ゲーム内にはプレーヤーを課金の道へといざなうシステムが十重二十重に張り巡らされていて、我々はごく自然に、そして極めて流麗に、課金プレーヤーへと仕上げられていったのであった。課金プレーヤーが誕生するまでの軌跡を追った一つのケースにすぎないが、10カ月の密着取材に基づく、濃厚で赤裸々な姿をここに記したい。