ハーバードビジネススクールのローレン・コーエン教授は、日本の老舗和菓子メーカー「虎屋」を題材にした教材を執筆。ハーバードの授業で教えているという。虎屋の事例から、企業が長年存続する要因をどう分析したのか。また長寿企業の多い日本が、その強みを生かすすべとは。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
ハーバード大教授が注目
虎屋はなぜ500年も続いているのか
佐藤智恵 虎屋は、コーエン教授がハーバードビジネススクールの授業で教えている企業の中でも最古の企業です。虎屋がおよそ500年も存続した要因をどのように分析していますか。
ローレン・コーエン 最も重要な要因の一つは、「一子相伝」を貫いてきたことだと思います。これは、私がこれまで研究した多くの創業200年以上の企業にも共通することです。現当主が一族の中から次の後継者を一人だけ選び、若いときから育成していく。このルールが虎屋を長く存続させてきた要因の一つであることは間違いありません。
しかしながら、親にとって「一人だけ選ぶ」というのは苦渋の決断です。私には下は1歳から上は13歳まで6人の子どもがいますが、例えばこの6人を前にして、「コーエン家のビジネスの後継者は君に決めた。その他の5人は家業には携われません」と伝えるのはとてもつらいことです。
虎屋のケースから学べるのは、一つの企業を何百年も存続させるためには、当主が難しい決断をいくつも下さなくてはならないことです。後継者の選定はまさしくその一つでしょう。