政府の失策を「若者の恋愛離れ」のせいにして責任転嫁
さて、そこで次に気になるのは、なぜマスコミは「若者の恋愛離れ」などという与太話をでっちあげてきたのかということだ。
ひとつには、先ほど申し上げたように「若者の○○離れ」が数字の稼げるキラーコンテンだからということもあるが、もうひとつ大きいのは、マスコミの大切な情報源である「政府」に吹き込まれたということが大きい。
この言葉からもわかるように、日本政府は、「若者の恋愛離れ」は晩婚化や少子化の背中を押す、非常にやっかいな問題であるというスタンスだ。マスコミはその主張をノーチェックで、右から左で流している。
これは見ようによっては「悪質な情報操作」である。少子化という問題を「恋愛に興味を抱かなくなった若者が悪い」ということにして、これまでの政府の失策をウヤムヤにしようとしているからだ。
実は世間的にはあまり知られていないが、少子化というのは、「日本の無策」を象徴する問題だ。50年以上も前からこうなることはわかっていたが、政治が何も有効な手を打つことなく放置してきたからだ。
例えば、1967年4月27日の「ふえる老人 減る子供 人口問題をどうする 厚相、審議会に意見きく」という読売新聞の記事では、以下のような厚生省人口問題研究所の推計が掲載されている。
実際のところ、昭和80年にあたる2005年の人口は1億2777万人で試算よりも増えたが、昭和90年にあたる2015年の15歳未満は12.6%、65歳以上は26.6%となり試算よりも深刻なことになった。このようにある程度のバラつきはあるが、実は日本は50年以上前から現在の「危機」をある程度、正確に予見していたのである。
しかし、何もしてこなかった。