公務員手当が支給されず、廃止される都市も
民間企業では減給を受け入れない従業員はクビ!?

 公務員の待遇が良い地域ほど、給与カットの影響は大きくなる。逆に経済があまり発展していない地域はもともと成果給があまり高くないから、その影響が限定的ということだろう。

 手当の支給が遅延する現象も、よく見られる。

 例えば、広東省の一部地域の公務員に対する手当支給が遅れていて、公務員の手当は2カ月、教員は1カ月猶予されたりしているという。広東省・深セン市では、数年前に導入された大卒への定住手当1万5000元(約30万円)、修士課程卒への定住手当2万5000元(約50万円)が廃止された。深セン市は中国で最も財政的に豊かな地域として知られるのだから、他の都市は推して知るべしだ。

 こうした減給は公務員に限ったものではなく、民間企業ではより広く見られる。しかも、今年に入ってオミクロン株が感染拡大してからより深刻化している。企業は生き残りをかけて、従業員に自主減給申請書の提出などを求めたりして、人件費を減らそうと躍起になっている。

 なかには50%もの大幅な「自主」減給を強硬に求める企業もあれば、「退職したときに給与の減額分を返す」と約束する企業もある。減給額が多い従業員のポストは守るが、減給に積極的に応じない従業員は「自主辞職」を求められてしまう。50%の減給を受け入れない従業員に対しては、会社を去ってもらう作戦を展開している企業もかなりある。

 北京のインターネット会社に勤務する女性の暁暁さん(31歳)は、基本給+成果給で月に1万5000元(約30万円)もらっていた。5月に入ってから在宅勤務をしていたが、5月中旬に、突然、給与を50%下げると会社からメールが送られてきた。

 大幅な給与削減作戦に不満をもつ同僚は、会社と交渉してみたが、結局、交渉が失敗して「自主辞職」という形で会社を去った。それを見た暁暁さんとほかの社員はやむを得ず給与の50%カットという条件をのんだ。しかし、わずか1カ月後の6月上旬に、投資者からの資金投入がなくなり、会社が経営困難に陥ったという理由でリストラされた。

「会社にまだ賠償できるお金があるうちに、退職した方がよい」と判断した暁暁さんは、入社して1年もたっていないため、わずか1カ月分の賠償金と6カ月分の社会保障金をもらって会社を辞めた。

 北京のIT会社に勤める阿文さん(28歳)は、5月の給料明細を受け取って、丁寧にチェックすると、成果給が1000元足りないということを発見した。会社に疑問をぶつけて説明を求めたら、会社側は周知するのを忘れたと言って、逃げ腰になった。