米連邦準備制度理事会(FRB)が金利を0.75ポイント以上動かすのは、ここ数十年間でも珍しいことではない。だが今週まで、それほどの幅で動かすのは、常に下方向だった。実際、事前にあまり示唆することなく迅速に動くのは常に、金利引き上げの時よりも引き下げる時だというのがFRB の金融政策の特徴だった。これは、アラン・グリーンスパン元FRB議長が「リスク管理」と呼んだ方針に根差したものだ。FRB は最大のリスクがどこにあるかを判断し、そのリスクを最小化するためには行き過ぎた動きのほうがまし、つまり統計学で言う「分布の裾」を切り落とすことが必要だという考えだ。1990年代終盤から2020年まで、このことは常に「行き過ぎた引き下げ」を意味した。グリーンスパン氏は2001年、0.5ポイントの利下げを8回実施した。1回目はIT(情報技術)バブルの崩壊、2回目は9.11同時多発テロへの対応だった。2008年の世界金融危機では、当時のベン・バーナンキ議長が3回にわたり0.75ポイントか、あるいはそれを超える利下げを行った。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まった2020年には、ジェローム・パウエル議長が1.0ポイントの利下げを実施。この間、米連邦公開市場委員会(FOMC)が0.25ポイントを超える利上げを決定したことはなかった。
FRBの利上げ 「意図的な行き過ぎ」の可能性も
過去数十年の方針から反転、高インフレより景気後退を選択か
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